当サイトは、複数の会社と協力して情報を提供しており、商品・サービスの申込みの際など、各企業から支払いを受けることがあります。掲載の順番には報酬等が考慮されています。
屋根工事には「葺き直し」という修理法があります。特定の屋根材でのみ施工ができる方法なのですが、今回は屋根の葺き直しについて詳しく解説していきます。
「葺き直しができるのはどんな屋根?」「費用はどの位かかるの?」という疑問にもお答えしていきます。屋根の全体工事を考えているが葺き替えか葺き直しのどちらがいいのか分からないという方もぜひお読みください。
葺き直しってどんな工事?
葺き直しは「ふきなおし」と読み、もともと屋根に乗っている瓦を再利用して屋根を補修する工事のこと。屋根の全体工事の一種で、日本瓦をはじめとする瓦屋根でのみ修理が可能です。
屋根の全体工事には他に「重ね葺き」と「葺き替え」の二種類があります。重ね葺きは既存の屋根の上から新しい屋根材を乗せるリフォーム方法。ただし建物の耐震性が下がるため、もともと重い瓦屋根の上にさらに屋根を葺くことはできません。
葺き替えは既存の瓦を全て撤去して下地を露出、下地を新しく交換したり補修した後に新しい屋根材で葺き直すという工法です。こちらは瓦や下地を全て一新できますので、新築で建てたばかりのような仕上がりになります。
和風住宅の瓦屋根に使われている日本瓦は、耐用年数が長いことが大きな特徴。瓦メーカーでは品質保証のための耐用年数を50年と設定していますが、破損しない限り半永久的に使用可能です。
一方で瓦の下に施工してある防水シート(ルーフィング)や下地の野地板(のじいた)、棟瓦を支える漆喰などは耐用年数が20年前後です。瓦の隙間から染み込んだ雨水や強風などで下地は次第に劣化していきます。
そのため瓦屋根で雨漏りなどを防ぐには、下地の補修や交換工事が必要になります。中でも瓦の材料費や処分費を考えたら、瓦を再利用できる葺き直しがおすすめ。葺き直しには雨漏りの予防の他にもこのような効果があります。
- 小動物の侵入
- 屋根の強度アップ
- 耐震性の向上
瓦を撤去する際には一枚ずつ状態を確認し、ダメになっている瓦だけ新しいものと交換しますので、葺き直し後すぐのメンテナンスの必要はありません。
葺き直しができる屋根材とは
先ほども少し触れましたが、葺き直しできるのは日本瓦をはじめとする寿命の長い屋根材のみ。葺き直しできる屋根材には具体的にこのような種類があります。
- 釉薬瓦
- 素焼瓦
- いぶし瓦
- 天然スレート
このうち釉薬瓦・素焼瓦・いぶし瓦は日本瓦と呼ばれています。瓦の製造方法の違いから呼び名が異なりますが、耐用年数はいずれも長くなっています。
天然スレートとは「粘板岩(ねんばんがん)」「頁岩(けつがん)」など天然の石を使用した屋根材のことで、割れない限り半永久的に使えます。日本瓦も天然スレートも屋根材としての耐用年数は50年程度と長寿命なため葺き直しができます。
ただし同じ瓦でも下のような材質や年数の瓦は葺き直しには向いていませんのでご注意ください。
- セメント瓦…定期的な塗り替えが必要
- 金属瓦…撤去の際に変形しやすい
- 50年以上前に施工したいぶし瓦…劣化が激しい
日本瓦の中でもいぶし瓦は、50年以上経過すると劣化が激しくなります。50年以上前に建築した屋根のいぶし瓦は葺き直しには向きませんので、新しい瓦もしくは新しい屋根材に葺き直す必要があります。
葺き直しが必要な屋根の劣化症状
それでは屋根がどんな劣化を見せたら葺き直しが必要になるのでしょうか?主な下地の劣化症状について詳しく見ていきます。
野地板の劣化
瓦屋根は垂木(たるき)という枠組みの上に、野地板→防水シート→桟木OR土→瓦の順で施工されています。一番下の野地板はコンパネとも呼ばれ、構造用合板やバラ板などを使用。年数が経つにつれて雨水でふやけたり腐ったりして20年ほどで劣化がひどくなります。
これを放っておくと雨漏りの原因にもなりますので、なるべく早めに補修や交換を行いましょう。
防水シートの破れ
野地板の上には雨水の侵入を防ぐ目的で、防水シート(ルーフィング)が隙間なく敷き詰められています。アスファルトを主原料としているため「アスファルトルーフィング」ということもあります。
防水シートの劣化が進むと、ひび割れを起こしたり接合部分の剥がれから雨水が染み込んでしまい、室内への雨漏りの原因となります。防水シートも耐用年数は20年程度、雨漏りを防ぐためには定期的な交換が必要です。
漆喰の崩れ
古い瓦屋根では瓦を固定する目的で漆喰を使用しています。桟木で瓦を固定している場合でも、屋根の一番高い場所にある棟瓦には漆喰を使っていることがほとんど。
この漆喰は放置していると強風や地震などで崩れ、上に乗っている瓦がズレたり落下する危険があります。表面がボロボロになったり剥がれいる場合は漆喰の寿命です。瓦が落下したり飛んでいく前に、なるべく早めに塗り直しましょう。
葺き直しのメリット・デメリット
瓦屋根の修理方法である葺き直しには、メリット・デメリットがあります。自宅の屋根をどのようにリフォームしたいかと考える材料にしてみましょう。
葺き直しのメリット
葺き直しの一番のメリットは、屋根の外観を変えずにリフォーム出来ること。思い入れのある瓦はそのまま使用できますし、住み慣れた自宅の見た目を変えたくないという方にもおすすめです。
また瓦を撤去処分する費用がかかりませんので、トータルの工事費用を抑えられます。使えるものを再利用するという観点から、環境への負荷がかからずエコになる工事方法でもあります。
葺き直しのデメリット
葺き直しのデメリットとして破損している瓦を新しくする際に同じ瓦が手に入らないということがあります。場合によってはその部分だけ色が違ってしまうことも。屋根の見た目を重視する方にはあまりおすすめできません。
さらに狭小地にある住宅では降ろした瓦の保管場所が確保できないと、トラックで他の場所まで運搬しなければなりません。その際に瓦が割れてしまうこともあります。瓦を丁寧に扱う必要があるため、葺き替えと比べて工事期間がそれほど短縮できないこともデメリットの一つです。
葺き直しの工事手順・費用相場
葺き直しにはどの位の費用や工事日数がかかるのでしょうか。瓦屋根のリフォームをお考えの方は工事スケジュールの参考にして下さい。
葺き直しの工事手順
葺き直しは主に下のような手順で工事が進んでいきます。
- 仮設足場の設置(半日~1日)
- 既存瓦の撤去(1日)
- 漆喰・防水シート・土の撤去および清掃(2日)
- 野地板の補修や交換(1日)
- 防水シート(ルーフィング)の設置(1日)
- 桟木を一定間隔で設置(1日)
- 瓦の葺き直し(1日~2日)
- 棟瓦を漆喰で固定(1日)
- 仮設足場の撤去(半日~1日)
合計の工事期間は10日前後ですが、天候や建物の立地条件によってはこれよりも日数がかかる場合があります。屋根修理の工事期間が長くなる理由や工法別の修理期間についてはこちらの記事をお読みください。
もし詳しい工事日程が知りたいという方は、見積もりを依頼した業者にお問い合わせください。
葺き直しの費用相場
葺き直しに必要な工事は次のような内容で、それぞれの単価はこちら。
工事内容 | 単価 |
足場設置・撤去費用 | 750円~1,000円/㎡ |
瓦・下地撤去費用 | 2,000円/㎡ |
野地板施工費 | 2,000円/㎡ |
防水シート施工費 | 700円/㎡ |
桟木施工費 | 1,000円/㎡ |
瓦葺き工事 | 5,000円/㎡ |
足場設置・撤去費用には㎡当たり750円~1,000円ほどかかります。また瓦と下地を撤去するには㎡当たり2,000円です。野地板・防水シート・桟木の施工費には材料費が含まれています。
最後に桟木に引っ掛けるようにして瓦を乗せていきます。これには㎡当たり5,000円の費用がかかります。一般の住宅では総額100万~200万円前後が相場です。
瓦屋根のその他の工事単価はこちらの記事を参考にして下さい。
葺き直しができる業者は?
屋根の葺き直しができる業者というのは、実は限られています。もちろん大手のリフォーム会社や屋根修理店などでも葺き直し工事を受注していますが、実際に工事をするのは下請けの業者です。間に一社余分に通すことでマージンや人件費がかかり、工事費用が高額になることを覚えておきましょう。
実際に葺き直し工事をするのは瓦業者になります。店名に「○○瓦店」や「△△瓦工事店」と“瓦”という文字が付いている業者は、瓦工事ができる業者と見て間違いないでしょう。地域版のタウンページやインターネットで検索すると簡単に見つけられます。
また「一般社団法人全日本瓦工事業連盟(全瓦連)」のホームページから、お住いの地域の加盟工事店を検索することができますので、業者選びに活用してみてはいかがでしょうか。
他にも屋根修理業者を選ぶポイントや優良業者の見分け方がありますので、こちらの記事を参考にしてみてください。
瓦屋根は葺き直しで雨漏りを予防しよう
瓦屋根や天然スレート屋根のリフォームでは、使える瓦を再利用できる葺き直しが一つの選択肢になります。耐用年数の長い瓦は年月が経っても見た目にほとんど変化を確認できませんが、中の防水シートや下地は風雨で劣化していることもあります。
室内側への雨漏りを防ぐためには野地板や防水シートの定期的な交換が欠かせません。葺き直しができるのは瓦業者ですので、瓦の専門家に屋根の劣化状況を見てもらい、雨漏りを予防するようにしましょう。