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「スレート屋根」と聞いて、どんな屋根を思い浮かべますか?これから家の新築やリフォームを検討するという方にとって、どんな屋根材を選ぶかは重要です。こちらの記事では特徴や施工方法、リフォーム費用を通してスレート屋根についてくわしく解説していきます。
すでにスレート屋根の家に住んでいるという方は、劣化症状に応じたメンテナンス方法やタイミングをご紹介していきます。この記事を読むことであなたの屋根選びや屋根リフォームの助けになること間違いなし!です。
この記事を監修した人
監修者
「屋根雨漏りプロ」として、関西、関東その他地域に屋根と雨漏り修理に特化したサービスを提供。大阪市内の高等学校を卒業後、自動車整備関連の勤務を経て住宅リフォーム業界に転職。現場での経験を積んだ後に独立。雨漏り修理においては豊富な経験を持ち、雨漏りの散水試験に強みを発揮し、多くの実績を持つ。他社が一辺倒な修理方法に頼る中、徹底した原因追究とお客様のニーズに合わせた最適な修理を提案する。
スレート屋根とはどんな屋根?
屋根材「スレート」について、まずは原料や構造といった基本的なことから解説していきます。スレートならではの注意点もありますので、屋根に登る際には十分注意しましょう。
原料・構造・寿命について
多くの家で使用されている「化粧スレート」は、強力なセメントにパルプ繊維を混ぜて板状に成形して製造されています。かつてはパルプ繊維の代わりにアスベストが使用されていましたが、健康に重大な被害を及ぼすことが分かり、現在では使用禁止になっています。
スレートは基材と呼ばれるベースの上に、無機化粧層を重ね、最後に色や輝きを出す無機彩石層を重ねた三層構造になっています。屋根には木材の下地「野地板」の上に雨水の侵入を防ぐ「防水シート(ルーフィング)」を張り、最後にスレートを金属のビスやボルトで固定します。
スレートの寿命は20年~30年程度ですが、メンテナンス次第では寿命を伸ばすことも可能です。適切なメンテナンスをすればコスパの良い屋根材ですので、選ぶ際の参考にしましょう。
主な補修方法は3種類
スレート屋根の主な補修方法は、カバー工法(重ね葺き)・葺き替え・屋根塗装の3種類です。それぞれ屋根の劣化具合や築年数によって適切な方法でメンテナンスします。
スレートの補修は、方法によってコツやポイントがありますので、スレートの補修工事に慣れた業者に依頼するようにしましょう。
屋根上の歩き方に要注意!
スレート屋根の上を住人や業者が歩く際には注意が必要です。というのもスレートは踏み割れしやすい屋根材で、間違ったところに足を置くと簡単にヒビが入ったり割れてしまうためです。
特にスレート屋根のメンテナンスになれていない業者や経験不足の作業員が点検や塗装などで作業をする際は、踏み割れが発生しがちです。この踏み割れを放置すると、ヒビが入った箇所から雨水が染み込んで屋根材の劣化に繋がります。
長時間放置すると下地にまで雨水が到達して室内への雨漏りの原因となりますので、スレート屋根を歩くのは経験豊富な専門業者だけにとどめ、自分で点検や補修をしないようにしましょう。
スレート屋根の種類・分類
スレートは原料による違いや形状、アスベストの有無によって様々な種類に分けられます。ここでは分類方法ごとの種類について解説していきます。
原料による分類方法
スレートは原料の違いで「天然スレート」と「化粧スレート」の二種類があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
天然スレート
「スレート」という言葉は本来、天然の粘板岩(ねんばんがん)を薄く板状に加工した建材のことを指します。現在では人工的に作った化粧スレートと区別するために「天然スレート」と呼ばれています。
この天然スレートは昔からヨーロッパのお城の屋根や外壁材として使用されており、天然石の持つ高級感や自然の風合いを楽しめます。海外では寺院や一般住宅の屋根にも天然スレートが使われています。
ただし日本では価格が高く一般の住宅で使用することが難しいため、それほど普及しませんでした。現在では東京駅の屋根材として、天然スレートが使われています。
化粧スレート
天然スレートが高価ということから、セメントとパルプ繊維を混ぜ合わせ、高温で板状に成形した「化粧スレート」が日本で作られるようになりました。かつてはアスベストを使用しており、「コロニアル」や「カラーベスト」といった商品名で呼ばれることがあります。
品質にムラがなく施工しやすいため多くの住宅の屋根に取り入れられ、今やすべての住宅の3割以上に化粧スレートが採用されています。軽くて厚みは5mmほどと薄く、安くて持ち運びが楽なのが特徴です。
化粧スレートの形状による分類方法
セメントとパルプの混合建材である化粧スレートは、成形する際に様々な形に変えることができます。形状による分類は厚型・波型・平板の3種類に分けられます。
厚型スレート
スレートを成形する際に厚みを出し、瓦状にしたのが「厚型スレート」です。陶器の瓦よりも材料費が安く瓦屋根のような雰囲気にできると、一時期は人気のある屋根材でした。
ただ陶器瓦ほどの耐久性がなく、平らに成形した平板スレートよりも価格が高くなるため徐々にシェアが縮小し、現在ではほとんど製造されなくなりました。
波型スレート
スレートを波型に成形したのが「波型スレート」です。屋根を葺くのに手間がかからず工期の短縮ができるということで学校や工場、倉庫の屋根に多く使用されています。
主に屋根材として使用されている大波スレートと、外壁専用の小波スレートの二種類があり、プラスチック製の波板のようにフックボルトで固定していきます。
平板スレート
平らな板状にスレートを成形したのが「平板スレート」です。厚みは5mmほどと非常に薄く、「薄型スレート」や「薄板スレート」などと呼ばれることがあります。
一般住宅の施工に向いており、ケイミュー株式会社の「コロニアル」や「カラーベスト」というシリーズが人気です。現在では表面に彩石や着色を施したカラーバリエーション豊富な平板スレートが登場し、住宅の雰囲気やテイストに合わせて色を選べるようになっています。
アスベストの有無による分類方法
2006年まではアスベスト入りの化粧スレートが製造されていました。アスベストの有無によっても分類することができます。
アスベスト入りスレート
日本で化粧スレートが製造され始めた1960年代から規制が始まる2004年までは、セメントにアスベスト(石綿)を混ぜて作られていました。よって2004年以前に建てられたスレート屋根にはアスベストが含まれている可能性があります。
しかしアスベストは空気中に飛散すると非常に細かいため、吸い込むと人の肺に侵入して重大な健康被害が発生することが分かりました。これを受けて日本では2004年に規制が開始され、2006年にはすべてのアスベスト製品の製造・使用・販売が禁止されました。
アスベストなしスレート
2006年にアスベストが全面禁止となってからは、代わりにパルプ繊維が混ぜられた化粧スレートが作られるようになりました。これは現在も主流で、多くの住宅の屋根材として使用されています。
一時期はアスベストなしスレートの早い劣化が問題となりましたが徐々に改善され、現在では耐用年数が30年となっている商品もあります。
スレート屋根と他の屋根材を比較!
スレートは他の屋根材に比べてどんなところが優れているのかを知るために、よく使用されている4種類の屋根材を比べていきましょう。こちらはスレートと他の屋根材との比較表です。
屋根材の種類 | 価格 (/㎡) | 耐用年数 | メンテナンス | 耐火性 | 耐震性・ 耐久性 | |
スレート | 6,000円~ | 20~30年 | 10年~ | 〇 | 〇 | |
アスファルトシングル | 5,000円~ | 10~30年 | 10年ごと | × | ◎ | |
ガルバリウム鋼板 | 7,000円~ | 20~30年 | 15年~ | △ | ◎ | |
瓦 | 15,000円~ | 50年~ | 不要 ※下地材補修あり | ◎ | × | |
トタン屋根 | 5,000円~ | 10~20年 | 10年~ | △ | △ |
スレートは耐火性・耐震性・耐久性は平均的ですが、価格がアスファルトシングルに次いで安く、耐用年数もそれほど短くないことから、コスパが良い屋根材ということが分かります。
その他の屋根材の特徴についてご紹介しますので、屋根材を選ぶ参考にして下さい。
ガルバリウム鋼板の特徴
ガルバリウム鋼板はアルミニウムの亜鉛やケイ素を混ぜた合金です。金属にしてはサビにくいという特徴を持つため、沿岸部の屋根に使用しても潮風で劣化しにくくなっています。
耐久性が高く耐震性に優れていて、汚れが付きにくいというメリットがあります。シンプルでスタイリッシュな屋根にしたい時はおすすめです。
一方で他の金属がこすれることで傷が付きやすく凹みやすいというデメリットがあります。リフォーム費用も高めなので、費用対効果を考えて施工することをおすすめします。
瓦の特徴
瓦は日本古来の屋根材として神社やお寺をはじめ、日本家屋でも長く使用されてきました。基本的にメンテナンスの必要がなく、耐用年数は50年以上という高寿命が魅力です。
独特の重厚感があり、素材や製造方法によって種類が多岐に渡るのも特徴です。屋根瓦を再利用した葺き替えリフォームができるのは、屋根材では瓦だけです。
一方で瓦の重量は坪当たり約160㎏と重く、柱や梁に適切な耐震工事が必要になります。地震の際には瓦が地面に落ちたり割れる可能性があります。またカバー工法でリフォームできないのも瓦のデメリットです。
トタン屋根の特徴
金属の亜鉛をメッキしたトタン屋根は、材料費や施工費が安いのが大きなメリットです。また軽量で耐震性に優れているのも特徴となっています。キチンと施工すれば雨漏りしにくく、積雪があっても問題ありません。
ただしサビやすくこまめなメンテナンスをしないと劣化が早まります。また断熱性が低いため、冬寒く夏暑くなるのがデメリットです。断熱性を確保するためには天井と屋根の間に断熱材を入れるなどの対策が必要となります。
アスファルトシングルの特徴
アスファルトシングルはガラス繊維の基材にアスファルトを染み込ませて固めた屋根材です。表面には細かい石粒を付着させて色や輝きを出しています。薄いシート状なので施工しやすく、どんな形の屋根にも葺けます。
屋根材自体が防水シートと同じようなつくりのため、非常に防水性が高く雨漏りしにくいのがメリットです。また軽量で耐震性が高いのも魅力となっています。
一方で雨水が滞留しないように施工可能な屋根の勾配が決まっており、表面の石粒が剥がれて美観を損ねるというデメリットがあります。強風が吹くと剥がれやすく、日当たりの悪い場所や水はけが良くないとコケやカビが発生することがあります。
スレート屋根の特徴を徹底解説!
家の屋根に使われている材質は様々ありますが、スレートの普及率は全体の3割以上に及んでいます。日本で普及率ナンバーワンのスレートについて、メリット・デメリットをくわしく見ていきましょう。
スレート屋根のメリット
スレート屋根にはたくさんのメリットがあります。他の屋根材と比較しながら、どんなところが優れているのか見ていきましょう。
価格が安い屋根材
スレートは他の屋根材と比べると材料代や施工費が抑えられるため、建築費用が安くなります。これは後のメンテナンス費用も同様で、リフォーム費用が抑えられると家にかけられる予算を確保するのも幾分楽になるでしょう。
スレートは施工や加工が簡単で取り扱いが難しくないのも、施工費を抑えられる一つの理由です。
耐震性・耐久性が高い
化粧スレートは厚みが5mmほどと薄く、1枚当たりの重量が軽いため屋根葺いたとき住宅にかかる負担が少なく耐震性を確保できます。地震がきても家の下部分に重心が来るため、瓦屋根と比べると揺れが少なくて済みます。
また瓦が落ちてくる心配もないので、外を歩いている時も安心です。スレートの耐用年数は20~30年と、他の屋根材に比べても遜色がないのがメリットです。
サビが発生しない
スレートはセメントとパルプ繊維を原料値しているため、金属屋根のようにサビることがありません。トタンやガルバリウム鋼板といった金属屋根ではサビを予防する塗料を塗ったり適切なメンテナンスが必要ですが、スレートではそういった心配がないのです。
ただ屋根の頂上部にある棟板金は金属製のため、風雨や紫外線の影響を受けてサビることがあります。棟板金のサビは定期的な塗装リフォームでメンテナンスが可能です。
防音性が高い
化粧スレートを屋根に葺く際には、スレート同士を一定程度重ねて施工するため屋根に厚みが生じます。これが屋根の防音性を確保するのに重要な役割を果たしているのです。
メーカーの調査では陶器瓦の屋根と同程度の遮音性が確保できるとしています。屋根にたたきつけるような大雨でも雨音が室内に響かないのがメリットです。
スレート屋根のデメリット
スレート屋根にはデメリットもあります。スレートならではの素材や施工方法により次のようなデメリットが発生することがあるのです。
防水性の低下で雨漏りが発生
スレートは素材自体には防水性がないため、屋根材として使用する際には防水塗装を施して使用します。この塗料の防水性が低下すると、スレートに水が染み込んだりして雨漏りの原因になるのです。
特に屋根は風雨や紫外線の影響を最も受けやすい場所です。塗膜の剥がれや劣化を放置すると、雨水が入り込んで膨張します。乾燥すると今度は収縮し、これを繰り返すと反りやひび割れの原因となります。
やがて屋根の下地に侵入した雨水は、室内へと雨漏りとなって現れてきます。スレートのメンテナンスで最も重要なのは防水性の確保です。定期的な塗装メンテナンスや補修を行い、屋根としての防水性を保つ必要があります。
台風・強風に弱い
スレートは薄くて軽いという特徴上、風の影響で剥がれたり割れることがあります。特に台風や突風といった強い風が吹いた時は、屋根から剥がれて飛散したり、落下物が衝突してヒビが入る恐れがあります。
放置すると雨漏りの原因となりますので、台風や強風の後はなるべく業者に屋根の状態をチェックし、破損箇所があれば適切な手当をしてもらうようにしましょう。
カビ・コケが発生することも
北面の屋根や湿気が多い場所ではカビやコケが生えやすくなります。特にスレート同士の接続部では湿気が溜まりやすいため、カビやコケの発生が見られます。
カビやコケをそのままにしておくと屋根の美観を損ねるだけでなく、屋根の劣化を早める原因にもなります。特にカビは増殖するため、室内側にまでカビが繁殖すると吸い込んで健康に悪影響を及ぼすことに気を付けましょう。
色褪せで美観が悪くなる
スレート屋根の経年劣化で表面の塗装の色褪せや剥げが見られます。一部のみならいいのですが、屋根全体に及ぶと美観が悪くなるでしょう。
スレート屋根の色褪せは屋根塗装で改善できます。スレート屋根の美観を保つためには、新築後10年程度で塗装メンテナンスを検討しましょう。
スレート屋根の主要メーカー・ブランド・色
化粧スレートを製造しているメーカーのブランドやカラーバリエーションについて見ていきます。スレートの種類を選ぶ際の参考にして下さい。
【ケイミュー株式会社】のカラーベスト
一般の住宅で使用する化粧スレートのほとんどは、ケイミュー株式会社という外装建材メーカーが製造販売しています。その中でも平板スレートの人気シリーズ「カラーベスト」がおすすめです。
「カラーベスト」やその中にある商品名「コロニアル」はスレート屋根の代名詞ともなっています。そんなケイミュー株式会社のカラーベストから代表的なブランドをご紹介していきます。
プレミアムグラッサ
ケイミュー株式会社のスレートの中でも最高品質なのが、プレミアムグラッサです。「グラッサ」と名前が付く商品には、独自に開発された無機系塗料「グラッサコート」が使用されています。
グラッサコートは色褪せの原因である紫外線を透過させない強固な分子結合が特徴です。有機系の塗膜に比べて長時間経過しても色褪せしにくくなっています。
また表面は石目調の素材感で、本物と見間違うような仕上がりになっています。天然の割石感が出るのは、メーカー独自の「バイアスカット」というカッティング手法ならではです。
グランデグラッサ
紫外線から色褪せを防ぐグラッサコートで表面をコーテイングしています。そこに釉薬で着色した何色もの無機彩石を使用し、独特の光沢を付けて仕上げています。
テクスチャーは木目調が基本となっており、質感や温かみの感じられる表情が特徴です。様々な色の彩石を付着させているため、見る角度によって異なる表情が楽しめます。
遮熱グラッサ
遮熱グラッサは無機系塗膜「グラッサコート」に赤外線を反射する顔料を配合し、遮熱性に特化したシリーズとなっています。グラッサコートと特殊な顔料により、屋根材への熱の蓄積や建物内への熱の伝達を抑える効果が期待できます。
屋根材としての遮熱性にプラスしてケイミュー独自の「熱シャット工法」で施工すると、建物内の温度上昇を大幅に抑制することができます。メーカーによると年間のエアコンのエネルギー量を約3%削減し、二酸化炭素の排出を軽減する効果があります。
コロニアルグラッサ
ケイミューの平板スレートの中で最も普及しているのがこちらのコロニアルグラッサです。カラーバリエーションが豊富で、多くの色から建物のテイストや雰囲気になった一色を選べるのがおすすめのポイントです。
表面は木目調の加工が施してあり、ナチュラルな印象の屋根にできます。豊富なカラーバリエーションを生かして、異なる色をあえて混ぜたシャッフルカラーも人気です。
クァッド・シリーズ
無機化粧層とその上の無機彩石を同色にし、表面に耐候性の高いアクリルコートを施工しています。仮にアクリルコートが劣化しても、下の2層がしっかりと色味をキープしてくれるので色褪せが気になりません。
屋根の水平方向に葺く「横一文字葺き」デザインで、伝統的ながらもスタイリッシュな屋根に仕上がっています。和風・洋風どちらの住宅にも合う人気のシリーズです。
色・カラーバリエーション
上でご紹介した5つのシリーズごとに、カラーバリエーションをご紹介していきます。それぞれにテクスチャーやシャッフルカラーの有無が異なりますので、選ぶ際の参考にしましょう。
シリーズ名 | カラーバリエーション |
プレミアムグラッサ | 11色展開 ※シャッフルカラーあり |
グランデグラッサ | 3色展開 |
遮熱グラッサ | 9色展開 |
コロニアルグラッサ | 16色展開 ※シャッフルカラーあり |
クァッド・シリーズ | 12色展開 |
施工方法・工期・タイミングは?
スレート屋根について大体のことが分かったところで、具体的にどんなリフォーム方法があるのかを見ていきましょう。その他にも施工方法ごとの工期やリフォームのタイミングについても解説していきます。
主な施工方法は3種類
スレート屋根の施工方法は重ね葺きとも呼ばれるカバー工法、葺き替え、屋根塗装の3種類となっています。それぞれの工事の方法や注意点はこちらです。
カバー工法(重ね葺き)
カバー工法は今ある屋根材の上から新しい屋根を乗せるリフォーム方法です。「重ね葺き」や「重ね張り」などとも呼ばれ、断熱性や防音性が高まる工事になっています。
スレート屋根にカバー工法でリフォームする場合は、ガルバリウム鋼板やアスファルトシングル、軽量瓦などが屋根材として使用されます。既存の屋根を撤去しないということで工期や費用が抑えられるのがメリットです。
屋根の劣化が屋根表面にとどまっている場合におすすめで、屋根の下地にまで劣化が及んでいる場合は施工できません。またすでに雨漏りが発生している場合は下地の劣化がひどくなる恐れがありますので、この場合は葺き替えを検討することをおすすめします。
葺き替え
屋根の劣化がひどかったり雨漏りが発生している場合は、屋根を撤去して下地を交換・補修したのち新しい屋根材を乗せる葺き替えがベストです。屋根と下地をいっぺんで新しくできるので、屋根の耐久性は格段にアップします。
既存の屋根を撤去する費用が発生するため、リフォーム費用は高額になりますが、この先何十年も同じ家に住む予定がある方は今後のメンテナンスコストを考えても葺き替えを選択した方が良い場合があります。
どんな屋根材でもリフォームが可能で、屋根材の種類によって耐震性や遮熱性、防水性の向上が期待できるでしょう。
屋根塗装
スレートにはもともと防水機能がないため、適切なタイミングでの屋根塗装が必須です。屋根塗装には見た目の美しさをキープするだけでなく、雨漏りを防いだりする防水性の確保という大切な役割があります。
塗料の種類によって耐用年数や性能、リフォーム価格が変わってきますので、環境や屋根の劣化具合に応じた塗料選びが重要です。またスレート屋根の塗装では、縁切りという作業がポイントになります。
縁切りとは塗料を塗ったスレート同士の間に隙間を作る作業で、この縁切りを怠ると下地が腐食したり雨漏りの原因となることがあります。スレート屋根の塗装になれていない業者は縁切りを行わないこともありますので、必ずスレートの塗装に慣れた業者に縁切りまでキチンと行うように依頼しましょう。
施工方法ごとの工期
ここでは3種類の施工方法ごとの工程や工期をご紹介します。カバー工法では既存の野地板の状態が良い場合に採用される「直接下葺きカバー工法」の工程・工期をご紹介します。
- 棟板金・雪止めの撤去
- 古い屋根の上に防水シート(ルーフィング)を張る
- 軒下・ケラバ水切りの設置
- 新しい屋根材を葺く
- 棟板金・谷樋板金の設置
野地板の状態が悪い時の「野地板増し張りカバー工法」では、①と②の間に新しい野地板を張る作業が追加されます。
次に葺き替えの作業工程と工期はこちらです。
- 既存スレート・下地の撤去
- 清掃
- 野地板張り
- 防水シート(ルーフィング)張り
- 新しい屋根材の設置
- 板金工事
既存のスレート屋根にアスベストが含まれている場合は、撤去や処分を慎重にする必要があるため工期が伸びます。詳しくは見積もりした業者にお問い合わせください。
最後に屋根塗装の工程と工期です。屋根塗装では塗装前の洗浄と塗装面の修理・ケレン作業がカギとなります。また洗浄後や塗料を塗った後は必ず十分に表面を乾燥させてから次の工程に進みます。
- 高圧洗浄
- 塗装面の修理・金属面のケレン作業
- 養生
- 下塗り
- 中塗り・上塗り
- 縁切り/タスペーサー設置
リフォームのタイミング
スレート屋根のリフォームのタイミングは、おおよそ次のような時期にこのような施工方法をとります。
施工の時期 | 施工内容 |
随時 | ・ズレた部分の差し替え ・外れたスレートの交換 ・ひび割れ補修 |
10年~ | ・棟板金の補修・交換 ・屋根塗装 |
20年~ | カバー工法(重ね葺き) |
30年~ | 葺き替え |
とはいえ家が建っている地域や気候条件、使用している材料の種類によってリフォームのタイミングは異なります。新築して10年経ったら年に一度は業者に屋根を点検してもらい、次にどんなメンテナンスが必要か確認しましょう。
スレート屋根の劣化症状別の修理方法や費用を詳しく知りたい方は以下の記事でも紹介しているので参考にしてみてください。
スレート屋根のメンテナンスについて
ここではスレート屋根のメンテナンス方法について、寿命や劣化症状ごとに見ていきます。すでにスレート屋根に劣化が現れているという場合は、どのようなメンテナンスが必要かチェックしましょう。
寿命・耐用年数は20~30年
スレート屋根の耐用年数は20年~30年前後です。もちろん環境やメンテナンス頻度によって短くなる場合もありますし、30年を超えても見た目や機能を維持できることもあります。
特にスレートは表面の塗膜の劣化が命取りになりかねません。定期的に屋根に登って状態をチェックして、必要なメンテナンスを行うようにしましょう。
主な劣化症状
スレート屋根には次のような劣化症状が現れることがあります。自宅の屋根の状態に応じて適切なメンテナンス方法を選択しましょう。
主な劣化症状 | メンテナンス方法 |
・瓦の欠け・割れ ・瓦の脱落 ・棟板金の浮き | 部分補修 |
・変色・色褪せ ・塗膜の剥がれ ・チョーキング ・コケ・カビ・藻の発生 ・ひび割れ | 屋根塗装 |
・全体のひび割れ ・全体の塗膜剥離 ・全体のコケ・カビの発生 | カバー工法(重ね葺き) |
・下地の劣化 ・複数個所の雨漏り ・屋根内部に及ぶ腐食 | 葺き替え |
メンテナンスフリーの屋根はない
どんなに高寿命の瓦で葺いてあっても、全くメンテナンスが必要ない屋根はありません。と言うのも屋根材の下に敷いている防水シート(ルーフィング)の寿命は20年前後で、屋根の防水性を維持するためには定期的な交換が欠かせないためです。
防水シートの交換を怠ると雨水が屋根の下地にまで侵入し、雨漏りの原因となってしまいます。家を雨漏りから守るには、どんな屋根でも防水シート交換が欠かせないことを覚えておきましょう。
施工方法ごとのリフォーム価格
屋根リフォームをする上で気になるのが、どの位の費用がかかるのかということです。こちらでは3つの工法ごとにリフォームの費用相場をご紹介していきます。
カバー工法(重ね葺き)
カバー工法でリフォームする際は、重ねて葺く屋根材の種類・グレードによって費用が変わってきます。もちろんスレート屋根の上にスレートを葺くことも可能ですが、屋根の重さが増えてしまうためより軽量な屋根材がおすすめです。
こちらは主な重ね葺き材ごとの相場です。
- ガルバリウム鋼板…5,000円~10,000円/㎡
- アスファルトシングル…5,000円~8,000円/㎡
- 軽量瓦…6,000円~12,000円/㎡
そしてこちらがガルバリウム鋼板と軽量瓦で重ね葺きしたときのリフォーム費用です。
建物面積 | リフォーム価格 (ガルバリウム鋼板) | リフォーム価格 (軽量瓦) |
40㎡(屋根面積65㎡) | 32.5万円~ | 39万円~ |
50㎡(屋根面積78㎡) | 39万円~ | 46.8万円~ |
60㎡(屋根面積100㎡) | 50万円~ | 60万円~ |
75㎡(屋根面積120㎡) | 60万円~ | 72万円~ |
雨漏りの有無や立地条件、足場の有無によって費用が変動するため、詳しくは見積もりを取ってご確認下さい。
葺き替え
スレート屋根を葺き替える際は、既存屋根の撤去・処分費用がかかるため、カバー工法よりも割高になります。建物面積ごとのリフォーム価格はこちらです。
建物面積 | リフォーム価格 |
40㎡(屋根面積65㎡) | 78万円~ |
50㎡(屋根面積78㎡) | 94万円~ |
60㎡(屋根面積100㎡) | 120万円~ |
75㎡(屋根面積120㎡) | 145万円~ |
処分するスレートにアスベストが含まれている場合は上記金額にプラスしてアスベストの撤去処分費用がかかります。
屋根塗装
屋根塗装では使用する塗料の種類やグレードによって費用が大きく変動します。こちらは一般的なスレート屋根用塗料を使った時のリフォーム価格です。
建物面積 | リフォーム価格 |
40㎡(屋根面積65㎡) | 15万円~ |
50㎡(屋根面積78㎡) | 20万円~ |
60㎡(屋根面積100㎡) | 25万円~ |
75㎡(屋根面積120㎡) | 30万円~ |
耐久性の高いフッ素塗料や断熱性をアップさせる断熱塗料を使用すると、上記の倍以上することがあります。
アスベスト入りの見分け方・撤去方法
スレート屋根にお住いの方が気になるのは、自宅の屋根にアスベストが含まれているかどうかではないでしょうか。こちらではアスベスト入りかを見分ける方法や撤去の際の費用についてご説明していきます。
アスベスト入りを見分ける方法
スレートにアスベストが含まれているかの見分け方には3つの方法があります。それぞれの見分けるポイントについてしっかり覚えておきましょう。
年代による見分け方
アスベスト(石綿)は屋根材としては。1960年代ごろから使用されはじめました。しかし健康被害の発生が報告されたため、徐々に建材や吹付の際の含有量が規制されるようになりました。
2004年にはアスベスト含有率が1%以上の建材の製造や使用が禁止され、2006年になると含有率0.1%以上の全ての製品の製造・輸入・使用が禁止されました。
屋根材としては2004年以降に製造されたスレートにはアスベストが含まれていないことになります。とはいえ、屋根に使用しているスレートがいつ製造されたか確かめるのは困難なため、2006年以降に建築した住宅の屋根に含まれていないと考えた方が良いでしょう。
商品名・メーカーによる見分け方
もし新築した住宅の施工図などに屋根材のメーカー・商品名・品番・型番が記載されているなら、それらから見分ける方法があります。こちらはクボタと松下電工でかつてアスベストを使用して製造していた商品一覧です。
メーカー | 商品名 |
クボタ | ・コロニアル(S36~S61) ・かわら27(S50~S63) ・ミュータス(S63~H6) ・アスコット(H6~H13) |
松下電工(現パナソニック) | ・フルベスト(S46~S53) ・アレナ・ウーノ(H11~H14) ・ツインアート(S61~H3) ・玄晶Ⅰ・Ⅱ(S61~H13) |
上記に商品名が含まれていない場合でも心配だという方は、「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で検索することができます。商品名などを検索欄に入力して調べるだけで、アスベストが含まれているかチェック可能です。
見た目による見分け方
家を建築した年がはっきりしかかったり、商品名が分からない場合でも見た目で判断する方法があります。築20年前後経過しているにもかかわらず、スレートにひび割れや反りといった劣化がほとんど見られない場合、アスベストが含まれている可能性があります。
アスベスト入りのスレートは耐久性が大変高いため、20年以上経っていても表面に劣化が現れないのが特徴です。逆に築10年前後でも表面にひび割れなどがあり場合はアスベストを含んでいないスレートということになります。
アスベストの撤去費用は?
アスベスト入りのスレートを葺き替えなどで撤去する場合は、撤去処分費用が追加でかかります。というのもアスベストの撤去には「石綿作業責任者技能講習」を修了した者でないと作業できないという法律があり、決められた手順で作業をしなければいけないためです。
解体では散水しながら手作業での作業となり、処分する際も書類の準備が必要となります。それらの手間や経費を考えると、アスベスト処分の費用相場はこのようになります。
作業内容 | 費用相場 |
屋根撤去・解体費用 | 3,000円~15,000円/㎡ |
処分費用 | 30,000円~50,000円 |
金額にすると25万~40万ほどプラスで費用がかかるため、40㎡の建物の葺き替え工事では、合計で103万~118万円となります。もし撤去費用に納得できない場合は、解体せずに新しい屋根を乗せるカバー工法を選択すると良いでしょう。
スレート屋根は適切なメンテナンスで寿命を伸ばそう!
スレート屋根は比較的施工費用が安く軽量で耐震性や防音性が高いことから多くの住宅の屋根に採用されてきました。しかし表面の塗膜が劣化すると防水性の低下から、ひび割れや反りの原因となり雨漏りすることもあります。
メーカーからは遮熱や色褪せ防止機能といった様々な商品が販売されています。アスベスト入りか心配な方は商品名や年代、見た目から判断してリフォーム方法を検討しましょう。
スレート屋根の寿命を伸ばすには、劣化症状やタイミングに応じたメンテナンスが欠かせません。新築後10年は塗装工事や部分補修を行い、年に1度は専門家による点検を受けることをおすすめします。