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屋根には「棟板金」という場所があります。あまり聞きなれない部分ですが、屋根の面同士をつなぐ大切な金属部分です。
今回はこの棟板金に焦点を当てて、劣化症状別の工事金額や工事日数、注意点などを解説。お宅の屋根の棟板金について、再度確認してみてはいかがですか?
棟板金とはどんな部材?
では棟板金とはどんな場所にあり、どのような機能を持つ部材なのでしょうか。
棟板金の機能や役割
そもそも「棟(むね)」というのは、住宅の屋根の面と面が接する山状の部分を指します。それが金属製であるため「棟板金」と呼ばれています。
棟板金は主に次のような屋根材で取り付けられます。
- トタン
- ガルバリウム鋼板
- ジンカリウム鋼板
- 化粧スレート
- コロニアル
- カラーベスト
- 厚型スレート
屋根の最も高い場所に取り付ける部材で、屋根同士を隙間なく接合し雨水の侵入を防ぐ役割があります。
屋根の下部分から葺き上げた屋根材は「貫板(ぬきいた)」という板材で押さえ釘などで固定、その上から棟板金をかぶせ釘やビスを打ち込みます。棟板金同士の接合部はコーキングで雨水が入らないように処理します。
棟板金は風や雨の影響を一番に受ける場所にあるため、屋根全体から見ても傷みやすく、修理回数の多い場所でもあります。
棟板金の材質
棟板金の材質は時代と共に変わってきました。20年ほど前まではトタン製の棟板金がよく使用されていました。本体のトタンはサビやすく、鉄製の釘も抜けやすいということで不具合が多くマメな修理が必要でした。
また貫板も木材を使っていたため腐りやすく、これも棟板金の修理頻度を上げる一因でした。
しかし今ではトタン製の棟板金はほとんど使われることなく、代わりにガルバリウム鋼板製の製品が主流となっています。耐久性が高くサビにくいので棟板金としてピッタリの材質です。
固定のために使うビスも鉄製からさびにくいステンレス製の「SUSビス」を使用。昔と比べて修理頻度が明らかに下がりました。
さらに棟板金同士を接合するシーリング材の品質も向上しています。もしこれから棟板金の交換をお考えなら、これらの最新技術で改良した材料を使って施工することをおすすめします。
棟板金の耐用年数とメンテナンスのタイミング
では棟板金の耐用年数やメンテナンス頻度はどの位と考えればよいのでしょうか。一昔前に主流だったトタン製の棟板金であれば、とうに寿命が来ている可能性が高いためなるべく早めにガルバリウム鋼板製のものに交換することをおすすめします。
ガルバリウム鋼板製の棟板金の耐用年数は10年~15年程度です。つまり築15年経った住宅の棟板金はそろそろ交換時期に入ったと考えてください。
棟板金というのは屋根の頂点部分や四隅に取り付けられているため、家の中で一番風の影響を受けます。特に台風や強風時で風から受ける負荷(風荷重)が最大になりますので、棟板金の剥がれや飛散という不具合が発生しやすくなります。
棟板金は主に次のような経過をたどって劣化が進みます。
- 棟板金を固定しているビスや釘が浮く
- 棟板金本体が浮く
- 風であおられて端から剥がれる
- 棟板金が飛ばされる
強風で飛ばされるのは一瞬ですが、剥がれるまでの不具合は徐々に時間を掛けて進行していきます。棟板金が飛散して建物や人をキズ付けてしまう前に、定期的に点検をして適切なメンテナンスをしましょう。
棟板金の劣化症状とその原因
先ほどご説明した棟板金の飛散に至る劣化症状を、その原因と共に見ていきましょう。原因を知れば対策を考えられますので、修理頻度を減らすためには有効です。
釘の浮き
棟板金の剥がれや飛散の主な原因はこの「釘の浮き」です。新築時や修理したばかりの時にはキチンと奥まで打ち込まれているはずなのですが、いくつかの理由でいつの間にか釘が浮いてきてしまいます。
棟板金の釘が浮く大きな原因は「熱膨張」によるもの。暑い夏場は特に、太陽の熱を受けて棟板金の温度が上昇して棟板金自体が膨張します。このとき貫板に固定されている釘が膨張により浮いてきます。
逆に夜になると温度が下がるため、浮いた釘を残したまま板金が収縮して元の大きさに戻ります。板金の収縮が繰り返されることによって徐々に釘の浮きがひどくなるのです。そのため日当たりの良い家は悪い家に比べて釘が浮くスピードが早くなります。
また築年数が経っている住宅では、古い鉄製の釘が使われています。釘がサビて膨張し、釘穴を押し広げてしまうことで釘を固定する力を弱めてしまうのも一つの原因です。固定する力が弱くなることで徐々に釘が浮いて、劣化の原因となります。
貫板の劣化も浮きを重症化させる原因
棟板金の下にある貫板の劣化が釘の浮きを誘発する場合もあります。得に鉄製の釘で固定している場合、先ほどの経緯で釘穴が広がり棟板金の内側に雨水が入りやすくなります。
中に入った雨水は木製の貫板を徐々に腐食させ、もろくなった貫板は釘を固定することが難しくなります。結果的に釘の浮きや釘の抜けにつながるという訳です。
棟板金の浮き・剥がれ
棟板金を固定している釘がいくつも浮いたり抜けたりすることで、棟板金自体が貫板から浮いて剥がれることがあります。こうなったら棟板金を交換するのはもちろんですが、貫板の交換も考えた方がいいでしょう。貫板の劣化が激しいと、棟板金を新しくしても再び釘が浮いてきてしまうことがあるためです。
棟板金の飛散
棟板金の釘が抜けていることに気が付かないまま放っておくと、強風や台風野タイミングで棟板金が飛ばされてしまうことがあります。棟板金の先端というのは尖っているため、人やモノに落ちたら大変危険です。
また棟板金が脱落した屋根は、貫板に直接雨が降って濡れるため雨漏りの原因にもなります。雨漏りがひどくなると屋根全体を葺き直しが必要になり、屋根下地も交換することになります。総額で費用が100万円以上かかることもありますので、棟板金の劣化が分かったらなるべく早めに修理するようにしましょう。
棟板金劣化症状別の工事金額と工事期間
ここでは棟板金の劣化症状別に修理にかかる費用や日数を解説していきます。
一番軽度な釘の浮きは、抜けている釘を再び打ち込んでコーキングを上からかぶせてフタをするように固定します。これは釘が再び浮いてくるのを防ぐ意味があります。
棟板金の剥がれや浮きの原因が貫板の腐食だった場合、貫板を新しいものに交換します。棟板金をいったん剥がして劣化した貫板を撤去。このとき新しい貫板を木材でなく樹脂製に変えると腐食しにくくなります。
風で棟板金が飛散した時は棟板金の交換工事と場合によっては貫板も交換することをおすすめします。雨が降った場合貫板に水が浸透して腐食の原因となってしまうためです。
棟板金や貫板はm(メートル)単位で単価を計算します。交換する長さが長いほど費用がかかる考えてください。こちらは劣化症状別の金額と工期です。
棟板金の 劣化症状 | 補修方法 | 工事金額 | 工期 |
釘抜け | 釘打ち | 1.5万~3万円 | 半日~1日 |
浮き・剥がれ | 貫板交換 | 5千~1万円/m | 1日~2日 |
飛散 | 棟板金交換 貫板交換 | 7千~1.2万円/m 5千~1万円/m | 2日~4日 |
もし貫板を撤去して、その下の防水シートもダメになっているようなら防水シートの交換も必要になります。
また屋根の上での作業のため、足場設置工事も必要です。足場は別途費用がかかり、相場は700円~1200円/㎡ほど、組み立てと解体にそれぞれ半日から1日程度の時間がかかります。
もしこれらの費用をおさえたいなら、屋根塗装といった他の屋根工事と一緒にすることをおすすめします。別途にかかる足場設置費用が抑えられます。屋根の勾配や作業の内容では足場が不要なこともありますので、詳しくは依頼する業者にお尋ねください。
棟板金を修理する際のポイント
棟板金を適切に安く修理するにはいくつかのポイントがあります。
DIYでの補修は避ける
棟板金の修理はDIYでは絶対にやめましょう。棟板金の修理のみならず屋根の上に登る作業はなるべく避けた方が安全です。
傾斜がある屋根の上はコツを掴んでいないと移動するのは危険ですし、万一滑り落ちてしまうと命に関わるケガをすることも。
また屋根の構造や知識のないまま修理をすると、間違って防水シートに穴を開けたり、貫板を破損する恐れがあります。そのままにしておくと雨漏りの原因となりますし、そこから業者に依頼すると高額な修理費用がかかってしまうこともあります。
こまめな点検が劣化を防ぐ
屋根の寿命を延ばすには、こまめな点検が必要です。築7~8年経ったら、屋根の専門業者に点検を依頼しましょう。軽微な釘浮きなら、釘打ちとコーキングだけで済む場合があります。
また屋根を点検、修理してもらう際には必ず動画や写真でその様子を撮影してもらってください。屋根の上というのは住んでいる人が確認しにくい場所です。これを悪用して手を抜く修理業者もいますので、点検写真や施工後写真を撮ってくれる業者なら安心して任せられる判断基準にもなります。
風災の場合は火災保険が使える
もし台風や強風といった自然災害で屋根板金が飛散した場合、入っている火災保険で費用を賄えるかもしれません。火災保険には3つの種類があり、それぞれ補償の範囲や内容が異なります。
保険の種類 | 補償範囲 | 保険適用例 |
住宅火災保険 | 家屋・家財 | 風災 |
住宅総合保険 | 家屋・家財 | 風災・水害 盗難・破損等 |
オールリスクタイプ | 家屋・家財・ エクステリア | 風災・水害 盗難・破損 機械設備の事故等 |
ここでいう保険適用例は「風災」です。風災とは次のような自然災害を含みます。
- 台風
- 突風
- 竜巻
- 暴風・強風
これらが原因で屋根板金が壊れた、飛散して雨漏りしたという場合に保険が適用になります。
ただし損害が生じてから3年以内に保険金を請求しないと権利が消滅してしまいます。また修理費用が20万円以下の場合は適用されない火災保険もありますので、ご自宅の火災保険の補償内容や免責金額などをしっかりと確認することをおすすめします。
棟板金の修理は板金業者に依頼
棟板金の修理はどんなリフォーム業者でもできる訳ではありません。大手のハウスメーカーやリフォーム専門店なら受け付けてくれますが、工事をするのは下請けの別業者になり、余分なマージンを上乗せした金額が請求されてしまいます。
棟板金の修理をなるべく安く抑えたいなら、金属屋根の修理専門業者や板金業者に依頼するのが一番です。地元の板金業者なら、すぐに調査に来てもらうことも可能ですし、工事の評判も確かめやすくなるでしょう。
棟板金の下地・貫板の材質にも注意する
棟板金や釘の材質はもちろんですが、棟板金の下にある貫板の材質にもこだわることをおすすめします。最近の棟板金はサビに強いガルバリウム鋼板製で、固定する釘もSUSビスと呼ばれるステンレス製のビスを使用しています。
このビスを固定するのが貫板ですが、昔から使われている木材では水による腐食が避けられません。そこで防腐処理された木材か、樹脂製のプラスチック木材を使うようにしましょう。
樹脂製の貫板は普通の木材に比べると多少価格が上がりますが、軽量で腐食にも強くSUSビスががっちり固定されるメリットがあります。これは釘の浮きや棟板金の剥がれを予防するのに大きな効果を発揮してくれます。
今後棟板金の修理で貫板を交換する機会があれば、貫板の材質にもこだわって選ぶことをおすすめします。
屋根を守る棟板金は適切に修理しよう!
今回は棟板金の修理について詳しく解説してきました。
棟板金は屋根の接合部分にあり、家を風雨から守ってくれる役割があります。それだけ釘の浮きや剥がれ、脱落などの劣化が多い場所。
定期的な点検をしてなるべく早めに対処すれば、劣化を最小限に抑えられ修理費用も掛かりません。
棟板金や貫板の材質も品質が向上し、軽くて腐食やサビが発生しにくいものへと日々変化しています。屋根の劣化を防ぎ機能を向上させるには、そのような部材を選んで適切に修理をしてください。