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「アスファルトシングルってどんな屋根材?」「リフォーム方法は何があるの?」など、屋根材の特徴が分からず不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
アスファルトシングルの国内シェア率は低いですが、防水・耐震・耐久・防音性が高く、リホーム費用がリーズナブルといった魅力があります。アスファルトシングルだけでも主に5つのブランドが存在するため、それぞれの違いを知ることも大切です。
屋根修理マイスターでは、独自のアンケート結果に基づいた屋根材の特徴、採用率、取り入れた理由などの口コミ情報もご紹介します。他にも屋根材別の比較やリフォーム工賃、施工方法が気になる方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
この記事を監修した人
監修者
「屋根雨漏りプロ」として、関西、関東その他地域に屋根と雨漏り修理に特化したサービスを提供。大阪市内の高等学校を卒業後、自動車整備関連の勤務を経て住宅リフォーム業界に転職。現場での経験を積んだ後に独立。雨漏り修理においては豊富な経験を持ち、雨漏りの散水試験に強みを発揮し、多くの実績を持つ。他社が一辺倒な修理方法に頼る中、徹底した原因追究とお客様のニーズに合わせた最適な修理を提案する。
アンケートから見る!アスファルトシングル屋根とは?
まずはアスファルトシングルとはどんな屋根材なのかを見ていきましょう。日本ではどんな屋根材が住宅に採用されているのかを、屋根修理マイスターが独自に調査したアンケート結果をもとに解説していきます。
アスファルトシングルはどんな屋根?
アスファルトシングルは基材であるガラス繊維(グラスファイバー)に、原油で最も重い成分であるアスファルトを染み込ませて表面に石粒を付着させ、シート状に成形した屋根材です。
1860年代にアメリカで開発されて北米での普及率は8割以上と、海外ではポピュラーな屋根材です。一方の日本ではまだ5%ほどのシェアしかなく、これからの普及が期待されます。
別名を「シングル」といい、屋根の下葺き材として使われる防水シートと製造方法はほとんど同じです。ただし下葺き材(アスファルトルーフィング)とは別のものとなりますので、間違わないようにしましょう。
アスファルトシングルの表面には細かく砕いた天然石や、着色した人工石を付着させています。石の色によって様々な色を表現でき、見る角度に応じて色の濃淡やグラデーションを楽しめます。
屋根材としては柔らかく、シート状になっているので扱いやすいです。複雑な形状の屋根にも対応でき、施工しやすいのがメリットです。
アンケートによる使用屋根材の割合
屋根修理マイスターでは独自に100名の方を対象に、どんな屋根材を使っているかアンケートを実施しました。アンケートの結果はこちらです。
使用屋根材 | 人数 |
---|---|
アスファルトシングル | 3 |
スレート | 20 |
ガルバリウム鋼板 | 17 |
瓦 | 49 |
トタン | 11 |
やはり昔ながらの瓦屋根や、最近建売住宅で主流のスレート屋根が人気となっています。金属製のガルバリウム鋼板やトタンに次いで、アスファルトシングルは一番少ない普及率であることがこちらのアンケート結果からも分かります。
屋根材を選んだ理由とは
上記でアンケートを実施した100名の方に、「どうしてその屋根材を選んだのですか?」という質問をしました。それぞれの屋根材ごとに選んだ理由は次のようになりました。
使用屋根材 | 選んだ理由 |
---|---|
アスファルトシングル | ・比較的安かったから ・誰にでもおすすめできると言われた ・家の雰囲気に合うと思ったから |
スレート | ・コスパが良いと業者に勧められて ・軽くて地震に強い ・ソーラーパネルを乗せるのに適しているから ・デザイン性がよく洋風建築にも合う |
ガルバリウム鋼板 | ・サビにくく防水性・耐久性が高いから ・見た目がすっきりとしていてキレイ ・塗り替えの必要がなく経済的 ・軽くて耐震性が高いから |
瓦 | ・昔ながらの日本家屋に合う重厚感 ・夏涼しく断熱性が高い ・部分的な交換が可能 ・塗装が必要なく耐用年数が長い |
トタン | ・雪国なので軽くて雪の滑りが良いから ・簡単に設置できる ・安くてメンテナンスがしやすい |
住宅の雰囲気やお住いの地域で選ばれた方が多いですが、「地震に強いから」や「メンテナンスしやすいから」という理由もあります。ですが皆さんに共通しているのは、「住宅の屋根に何を求めるか」によって屋根の材質を選んでいるということです。
アスファルトシングルとその他の屋根材を徹底比較!
屋根材の選んだ理由が分かったところで、屋根材ごとの特徴を比較しながら見ていきましょう。こちらではアスファルトシングルとその他の屋根材の違いを、徹底的に比べてみました。
価格や耐用年数の違い
まずは気になる価格や耐用年数、メンテナンスの頻度を比べていきます。屋根に重要な耐火性や耐久性も比較できますので、屋根材を選ぶ際の参考にしましょう。
屋根材 | 価格 (㎡当たり) | 耐用年数 | メンテナンス | 耐火性 | 耐震・耐久性 |
---|---|---|---|---|---|
アスファルトシングル | 5,000円~ | 10~30年 | 10年ごと | × | ◎ |
スレート | 6,000円~ | 20~30年 | 10年ごと | 〇 | 〇 |
ガルバリウム鋼板 | 7,000円~ | 20~30年 | 15年ごと | △ | ◎ |
瓦 | 15,000円~ | 50年~ | 不要 ※下地材補修必須 | ◎ | × |
トタン | 5,000円~ | 10~20年 | 10年ごと | △ | △ |
屋根材として一番価格が高いのは瓦ですが、その分耐用年数が50年以上と他の屋根材とは比べ物にならないくらい長いのが分かります。そのほかの屋根材は価格や耐用年数に多少のばらつきがあり、それぞれの素材で性能が違ってきます。
その他の屋根材の主な特徴
こちらでは上の表で示した以外の特徴をご紹介していきます。どんな屋根材でもメリットがあればデメリットがあります。自分が屋根に一番求めるものは何かにスポットを当てて選んでみてはいかがでしょうか。
スレートの特徴
スレートとはもともと天然の粘板岩を板状に加工した屋根材のことで、価格が高い天然スレートと、セメントを固めて成型した化粧スレートの二種類に分けられます。
化粧スレートは安価で扱いが簡単なため日本でも普及し、多くの住宅の屋根材として使われるようになりました。
- 施工業者が多く施工費用が安い
- 軽量のため耐震性が高い
- バリエーションが豊富
- アスベストを含むものがある
- 割れやひびが入りやすい
- 塗装リフォームが必要
- 防水性が低め
ガルバリウム鋼板の特徴
ガルバリウムというのはアルミ・アルミ・シリコンで作られた合金のことで、サビにくく耐久性が高いのが大きなメリットです。中には断熱材と一体になった種類もあり、遮音性や断熱性のアップが期待できます。
- 金属の中ではサビにくく耐久性がある
- 軽量で耐震性が高い
- 防水性に優れている
- シンプルでスタイリッシュな外観にできる
- 張り替えに時間がかからない
- ひび割れしにくく汚れが付きにくい
- リフォーム費用が高め
- 傷・凹みが付きやすい
- 塗装リフォームが必要
瓦の特徴
日本でも古くから屋根材として使用されていて、粘土を成形したものを窯で焼いて仕上げています。中にはセメントや金属などで作られた瓦もありますが、「瓦」という場合はほとんどの粘土瓦のことを指します。
窯で焼く際に釉薬を使用する・しないでも質感が異なるほか、生産地でも瓦の表情が異なります。
- 種類が豊富で重厚感が出せる
- 防音性が高い
- 結露しにくい
- 塗装リフォームが不要
- 耐久性が高い
- 葺き直しリフォームが可能
- 施工費用が高め
- 重量があるため耐震性の確保が必要
- 地震などで脱落や割れの危険がある
- カバー工法で施工できない
トタンの特徴
鉄板を亜鉛のメッキで覆ったトタンは、高度経済成長期に広く住宅に普及しました。昔の家の屋根というイメージが多いですが、降雪が多い地方では現在でもトタン屋根が主流です。
- 工事価格が安い
- 軽量で耐震性が高い
- 雨漏りしにくく雪に強い
- サビやすい
- 断熱性・防音性が低い
- メンテナンスコストがかかる
アスファルトシングルの特徴を知ろう!
いよいよ本題のアスファルトシングルについて見ていきましょう。屋根材にしたときのメリットとデメリットを知ることで、アスファルトシングルの特徴が分かるようになります。
アスファルトシングルのメリット
まずはアスファルトシングルのメリットからご紹介していきます。日本ではまだあまり普及していない屋根材ですが、アスファルトシングルにはこんな良い点があるのです。
雨漏りしにくく防水性が高い
アスファルトシングルは元々防水シートと同じ構造の物が仕上げ材になっているので、防水性が高いのが大きなメリットです。また材質自体も柔らかく、金属で起こるサビやスレートで生じるひび割れが起こりやすいのも特徴になっています。
アスファルトシングルは通常、専用のセメント製接着剤とビスやタッカーを使って固定します。なるべく穴を開けないように施工できると雨漏りを予防になりますので、防水性を高めるにはなるべくビスなどを使わずに施工できる業者を見つけることが求められます。
防音性に優れている
アスファルトシングルのほとんどの商品には、表面に天然石が付着しており、この天然石が緩衝材となって雨音が室内に響きにくくなるという効果があります。
トタンをはじめとする金属屋根では、強い雨が降ると雨音が室内に響いて煩いと感じることがありますが、アスファルトシングルでは防音性に優れているため、そういった不安がありません。
耐震性・耐久性が高い
アスファルトシングルは他の屋根材と比べて非常に軽いため、耐震性が高いといえます。一般的な屋根材の㎡当たりの重量はこちらです。
- アスファルトシングル・・・9~12㎏
- スレート・・・18~21㎏
- セメント瓦・・・35~45㎏
- 土葺き瓦・・・50~60㎏
建物の屋根部分が軽ければ軽いほど、地震の揺れに対して強くなります。同時に表面を小さな石粒で覆っているため傷が付きにくいのもメリットです。
かつてのアスファルトシングルの耐久性は10~20年前後でしたが、研究が進み現在では30年以上の耐久性を持つ製品も登場しています。中にはメーカー保証で30年の保証を付けている商品もありますので、他の屋根材とそん色のない耐久性であることが分かります。
リフォーム価格は安め
アスファルトシングルのリフォーム価格は、他の屋根材と比べて安いのが特徴です。屋根材自体が比較的安価というだけでなく、シート上で柔らかいという特性から施工がしやすいのも理由の一つです。
カッターやハサミでカットでき、接着剤やタッカーを使って施工できるので、それほど経験や知識のない業者でも施工しやすくなっています。とはいえ端部の処理や重ね方を間違うと雨漏りの原因となりますので、施工は実績のある業者に依頼するようにしましょう。
アスファルトシングルのデメリット
アスファルトシングルにはこのようなデメリットがあります。リフォームでアスファルトシングルに葺き替えようとお考えの方は、自宅の屋根勾配や地域特性をよく確認しましょう。
施工可能な屋根勾配が決まっている
アスファルトシングルには施工できる屋根勾配(やねこうばい)が3.5寸以上と決まっています。屋根勾配とは屋根が傾斜している度合いのことで、地面と水平方向に10進んだのに対し、高さがどの位になるかで表されます。
たとえば水平方向に10進んだ時の高さが3の場合、「3/10」と表され、「3寸勾配」といいます。お宅の建築図面の屋根部分の付近に、三角形と10や6という数字がかかれているのが屋根勾配です。
アスファルトシングルではこの屋根勾配が3.5寸以上なければ施工できず、勾配が緩い屋根には不向きとなっています。勾配が緩い屋根では雨水の滞留時間が長く、わずかな隙間からでも雨漏りが発生します。
アスファルトシングルは熱で膨張しやすく、寒さで収縮しやすいという特性もあります。季節の変化や気温の急激な変動で自然に隙間ができてしまうため、雨漏りを防ぐには基準を満たした勾配の屋根に設置することが求められます。
石の剥がれが気になることも
経年劣化によってアスファルトシングル表面の天然石が剥がれ、見た目が悪くなることがあります。また樋などに溜まった落ちた石粒のお手入れが必要になるのもデメリットです。
石が剥がれたからといって「すぐに修理しなければいけない」という訳ではありません。ですが石粒は表面を保護する役割があるため、長い時間放っておくと破れやすくなり、雨漏りの原因となるので気を付けましょう。
台風・強風に弱い
屋根材同士の圧着が十分でなかったり、接着剤の塗布が不十分だと台風などの強風で剥がれたり破れることがあります。アスファルトシングル自体軽いため、パタパタと風にあおられ、施工不良があるとそこから反って破れてしまいます。
特に台風の後などはこうした剥がれや破れがないか、専門の業者に屋根に登ってチェックしてもらうと安心でしょう。
カビ・コケが生えることも
高温多湿の地域や湿気がこもりやすい北側の屋根では、アスファルトシングルの表面にカビやコケ、藻が生えてしまうことがあります。見た目が汚らしくなるだけでなく、屋根材の中に湿気が残り続けると、膨張して破れの原因にもなります。
カビやコケが表面に発生した屋根は、高圧洗浄で表面をキレイにした後、塗装やカバー工法でリフォームが必要になる場合があります。
主力メーカーごとの種類・ブランドに違いは?
アスファルトシングルは日本では普及がこれからの屋根材ですが、各メーカーでは開発を重ね、魅力ある商品づくりを行っています。代表的なブランドをご紹介するとともに、それぞれの特徴を一覧で解説していきます。
ニチハの『アルマ』
『アルマ』とはラテン語で「鎧(よろい)」を意味します。その名前通り、耐久性に優れているのが大きな特徴です。ガラス基材は2層構造になっており、その表面は天然石で覆われています。
和風建築と洋風住宅のどちらにも合わせやすいと人気で、他の屋根材に比べて廃棄家庭での二酸化炭素排出量が少ないのも、環境に配慮されたメリットになっています。
スペック | 商品名:アルマ |
保証年 | 製品保証(割れ・剥離)10年対応 ※保証には諸条件あり |
耐風性能 | 基準風速38m/s以上の強風地域でも使用可 |
カラーバリエーション | 5色 |
重量 | 約27㎏(1梱包/16枚) |
その他特徴 | 軽量性・耐候性・耐衝撃性・耐水性・施工性 |
価格 | 500円/枚(3,500円/㎡) |
オーウェンスコーニングジャパンの『オークリッジ』
アメリカに本社があるオーウェンスコーニング社は、世界最大級のガラス繊維製造会社として、アスファルトシングルをはじめとする建材を販売しています。
『オークリッジ』は海外製品としては初めて日本の防火試験をクリアしています。また金属を表面にコーティングした石を使用することで従来品と比べて藻が付きにくい効果があるのもポイントです。
「ライフタイムワランティー」という長期の製品保証が受けられるのもこちらの製品の魅力です。
スペック | 商品名:オークリッジスーパー |
保証年 | 制限付き長期保証 |
耐風性能 | 6本釘使用の場合50m/sの強風に対応 |
カラーバリエーション | 7色 |
重量 | 1.74キロ(27.1キロ/ケース) |
その他特徴 | 耐火性能・消音性・対藻性 |
価格 | 3,500円~(1梱包/16枚入り) |
旭ファイバーグラスの『リッジウェイ』
グラスウール製品の製造開発を手掛ける旭ファイバーグラス社の『リッジウェイ』は、耐火性や防水性、耐衝撃性に優れた屋根材です。
ランダムに配置された彩色石によりグラデーションカラーを表現し、屋根に高級感とデザイン性を持たせてくれます。
スペック | 商品名:リッジウェイ |
保証年 | 制限付き長期保証 |
耐風性能 | 標準仕様実験(風速38m/s)、強風仕様実験(風速46m/s)で浮き剥がれなし |
カラーバリエーション | 5色 |
重量 | 24.4㎏(1ケース/14枚入り) |
その他特徴 | 耐火性・防水性・耐風性・耐衝撃性 |
価格 | 805円/枚(11,240円/ケース) |
田島ルーフィングの『シングル』
田島ルーフィング社の『シングル』は、アスファルトシングルの中で最も汎用されている商品の一つです。防水シートの2層貼りと接着剤固定によって、釘穴からの雨漏りを予防します。
1/10の緩勾配屋根にも対応可能なので、これまで勾配で諦めていた屋根にも施工できます。またセルフクリーニング効果のある光触媒機能付きもありますので、屋根の汚れが気になる方におすすめです。
スペック | 商品名:シングル |
保証年 | なし |
耐風性能 | 38m/秒の耐風性(60mmアンカーを使用) |
カラーバリエーション | 13色 |
重量 | 7.8枚/㎡=約 9.0kg/㎡ |
その他特徴 | 耐候性・防汚性・遮熱性・断熱性 |
価格 | 11,000円~/㎡ |
田島ルーフィングの『ロフティ』
『ロフティ』は上でご紹介した『シングル』のハイグレード版として、2倍の引き裂き強度を誇ります。耐用年数は25年と高寿命なのも人気のポイントです。
断熱性が高く外断熱リフォームの屋根材としても使用されています。表面の天然石が他社製品と比べて大粒なので、重厚感があり高級感を感じられる仕上がりになっています。
スペック | 商品名:ロフティ |
保証年 | なし |
耐風性能 | 引き裂き強度185(11N) |
カラーバリエーション | 3色 |
重量 | 23.5㎏(1.79㎡/束) |
その他特徴 | 耐熱性・耐アルカリ水性・耐凍結性 |
価格 | 14,700円~/㎡ |
リフォームの施工方法・工期・タイミングは?
アスファルトシングルの特徴や商品ラインナップが分かったところで、実際にリフォームに使用する際の施工方法や工期、工事のタイミングについて見ていきましょう。アスファルトシングルのリフォーム方法は主に3つあり、それぞれの注意点についても確認してください。
各施工方法の特徴と注意点
アスファルトシングルのリフォーム方法は、カバー工法・葺き替え工事・屋根塗装の3種類です。それぞれの工事の特徴や注意すべきポイントはこちらです。
費用を抑えられるカバー工法
カバー工法とは既存の屋根はそのままに、新しい屋根材を上から覆う(カバー)するように施工するリフォーム方法です。アスファルトシングルは被せる方と被せられる方の両方が可能な、数少ない屋根材の一つになっています。
カバー工法の特徴はこちらです。
- 葺き替えよりも費用が安い
- 工期が短縮できる
- 遮熱性・防音性がアップ
- 廃材が発生しない
- アスベスト入りのリフォーム方法として適している
ただし従来の屋根材がそのままということで、次のような注意点があります。
- 屋根が重くなることで耐震性が低下
- 次のメンテナンス費用が高くなる
- 施工できない屋根がある
従来の屋根材が瓦屋根の場合、新しい屋根材を固定することが不可能なため施工できません。また一度カバー工法でリフォームしてしまうと、次は葺き替えしか方法が無くなるため、次回のメンテナンス費用が高額になる可能性があります。
屋根を一新!葺き替え工事
葺き替え工事は今までの屋根材を全て撤去して防水シートを交換、梁や木部といった構造部分の補修を行い、また新しい屋根材を葺き直すというリフォームです。葺き替え工事の特徴はこちらです。
- 下地と屋根材の両方を新しくできる
- 雨漏りがなくなる
- 瓦→アスファルトシングルにすることで耐震性アップ
- 現状の屋根材種類に関わらず施工可能
ひどい雨漏りをストップできたり、下地の劣化まで修繕できるのがメリットです。また一度カバー工法でリフォームした場合も、次のメンテナンスでは葺き替え工事となり、次のような注意点があります。
- 屋根リフォームの中では一番費用がかかる
- 工期が長め
葺き直しリフォームは不可
アスファルトシングルの屋根では葺き直しリフォームはできません。葺き直しとは瓦屋根で用いられるリフォーム方法のことで、現在使っている瓦を一度撤去し、下地の防水シートの交換や桟木の打ち替えを行い、再び瓦を元に戻す工事のことです。
葺き直しは耐用年数が長く耐久性の高い瓦でのみ可能なリフォームで、表面の石が剥がれたり、コケの付きやすいアスファルトシングルを葺き直すことはできません。下地の補修が必要な場合は、表面の屋根材ごと新しくする葺き替え工事を選びましょう。
屋根塗装は縁切りが必須
表面の劣化が目立つ場合は、屋根塗装でリフォームできます。アスファルトシングル屋根の塗装工事の特徴はこちらです。
- 耐久性・防水性を保てる
- 美観を保つ
- 費用を抑えられる
アスファルトシングルの塗装工事では次のことに注意してリフォームを行ってください。
- 水性塗料を使用しなければならない
- つや消しタイプの塗料を使う
- 縁切りが必要
屋根塗装で使用する塗料には水性と油性の二種類がありますが、アスファルトシングルを塗装する場合は水性塗料を使わなければなりません。というのもアスファルトシングルに油性塗料を使ってしまうと、アスファルトの成分が外に溶け出して(ブリード現象)しまうためです。
また塗料はツヤ消し塗料を使用しましょう。トタンなどの使用するようなツヤあり塗料で塗ってしまうと、アスファルトシングルが塗料を吸い込んでムラが生じてしまいます。
アスファルトシングルに使える水性塗料の種類や塗料名はこちらです。
塗料の種類 | 塗料名 |
シリコン | 水系カスタムシリコン 水系ナノシリコン 水系シングルサーフ 水系シリコンベスト 水性ヤネフレッシュシリコン |
フッ素 | 水性ヤネフレッシュフッ素 |
遮熱シリコン | 水性クールタイトSi |
遮熱フッ素 | 水性クールタイトF |
水性塗料で塗装した後は塗料が乾く前に「縁切り」という作業が必要になります。縁切りとは屋根材同士が重なっている部分の隙間にカッターやタスペーサーという専用金具を差し込み、隙間を作る作業です。
縁切りを怠ると屋根材が重なった部分に雨水がたまり、次第に下地にしみこんで雨漏りの原因となります。アスファルトシングル屋根の塗装工事を依頼する際は必ず縁切り作業を行うようにチェックしましょう。
施工方法ごとの工期の違い
ここではアスファルトシングルの3種類のリフォーム方法ごとに大まかな工事の流れや工期をご紹介します。リフォームを予定されている場合は、工事スケジュールの参考にしましょう。
重ね葺きリフォームでは次のような流れで工事が進められ、全体では3日~7日ほどの工期がかかります。
- 棟板金の撤去
- 既存の屋根に防水シートを敷く
- アスファルトシングルを張る
- 棟板金設置
葺き替えリフォームでは既存の屋根材を撤去する必要があるため、重ね葺きよりも長めの4~10日の工期がかかります。
- 既存の屋根材を撤去
- ルーフィング(防水)シート張り替え
- 新しいアスファルトシングルを張る
- 棟板金設置
塗装工事では専用の下塗り材を塗った後、中塗り・上塗りの計3回塗料を塗り重ねます。全体の工期は4日~7日前後です。
- 高圧洗浄で表面の汚れを落とす
- 養生
- 下地の調整・補修
- 下塗り・専用の下塗り材の塗布
- 中塗り・色のついた塗料を塗る
- 上塗り・中塗りと同じ塗料を重ねて塗る
- 縁切り
10年を目安にリフォームが必要
アスファルトシングルは基本的に10年を一区切りとしてリフォームが必要になります。新築で建ててから10年後に塗装工事を行い、20年を過ぎたら現状を確認して重ね葺きか葺き替えでリフォームします。
もちろんお住いの地方の気候や立地条件によって異なりますが、どんな屋根材でも定期的な点検は欠かせません。まずは新築やリフォームしてから10年をめどにメンテナンスを考えましょう。
耐用年数や劣化症状から見るメンテナンス法
こちらではアスファルトシングルの耐用年数や劣化症状ごとのメンテナンス方法をご紹介します。すでにアスファルトシングルの屋根にしているという方はメンテナンスの参考にしてください。
耐用年数は20~30年
アスファルトシングルの耐用年数は20~30年です。かつては10年~20年と今よりも短かったのですが、メーカーによる開発や改良が進んで今の耐用年数まで伸びました。
とはいえどんな屋根材で葺いていたとしても、下地に使用している防水シートの耐用年数は20年前後のため、葺き替えやカバー工法によるリフォームは必要になります。
劣化症状ごとのメンテナンス方法
こちらではアスファルトシングルによくみられる劣化症状ごとに、必要なメンテナンス方法を一覧でご紹介します。お宅のアスファルトシングル屋根にこのような症状が現れたら、速やかに適切なメンテナンスを行ってください。
主な劣化症状 | メンテナンス方法 |
・一部分のめくれや剥がれ | 部分補修 |
・複数個所のめくれや剥がれ ・屋根材の脱落 ・一部分からの雨漏り | カバー工法 |
・下地の劣化 ・躯体の腐食 ・複数個所からの雨漏り | 葺き替え |
・色褪せ ・変色 ・チョーキング ・コケや藻の付着 ・表面の石の剥がれ | 塗装工事 |
上の劣化症状の他に塗膜の膨れや浮きが発生することがあります。これは湿気や雨水が内部に侵入してすることで起こります。原因は経年劣化や施工不良が考えられますが、屋根材の剥がれや雨漏りにも繋がるため、専門家のチェックが必要となります。
施工事例ごとのリフォーム価格
気になるリフォーム方法ごとの費用相場をご紹介していきます。いずれの場合も屋根形状や立地条件、使用する材料のグレードによって相場は変動しますので、詳しくは見積もりを依頼してご確認ください。
カバー工法
カバー工法でのリフォーム相場は、1㎡当たり7,000円~が相場です。建物面積(屋根面積)ごとのリフォーム価格はこちらです。
建物面積 | リフォーム価格 |
40㎡(屋根面積65㎡) | 46万円~ |
50㎡(屋根面積78㎡) | 55万円~ |
60㎡(屋根面積100㎡) | 70万円~ |
75㎡(屋根面積120㎡) | 84万円~ |
葺き替え
葺き替えリフォームでは、撤去する屋根材にアスベストが含まれているかいないかで大きく変わってきます。アスベストが含まれていない場合の㎡当たりの単価は8,000円前後ですが、アスベストが含まれていると10,000円前後と高くなります。
建物面積 | アスベストなし | アスベストあり |
40㎡(屋根面積65㎡) | 52万円~ | 65万円~ |
50㎡(屋根面積78㎡) | 63万円~ | 78万円~ |
60㎡(屋根面積100㎡) | 80万円~ | 100万円~ |
75㎡(屋根面積120㎡) | 96万円~ | 120万円~ |
屋根塗装
屋根塗装リフォームの相場は1㎡当たり3,000円~5,000円となっています。屋根塗装のリフォーム価格はこちらです。
建物面積 | リフォーム価格 |
40㎡(屋根面積65㎡) | 20万円~ |
50㎡(屋根面積78㎡) | 24万円~ |
60㎡(屋根面積100㎡) | 30万円~ |
75㎡(屋根面積120㎡) | 36万円~ |
塗装工事ではツヤ消しタイプの水性塗料を使い、縁切りをする等アスファルトシングルの塗装ならではの注意点がありますので、施工実績の豊富な業者に依頼するようにしましょう。
アスファルトシングルのリフォームはDIYでも可能?
最低でも20万前後はかかるアスファルトシングル屋根のリフォームですので、自分でDIYで補修したいと考える人もいるでしょう。こちらでは必要な材料やDIYによる補修方法をご紹介していきます。
材料はホームセンターで入手できる
アスファルトシングルの補修に必要な材料は、大型ホームセンターで手に入れることができます。劣化のある一部のアスファルトシングルを剥がして、新しいアスファルトに張り替えるDIYで必要な材料や道具はこちらです。
- アスファルトシングル
- 専用接着剤
- 専用固定釘
- カッターナイフ
コケや藻が付着した表面を洗い流す高圧洗浄機や塗装に必要な水性塗料などもホームセンターで購入できますので、興味のある方は探してみてはいかがでしょうか。
DIYによる補修方法
アスファルトシングルがめくれたり剥がれたりしている場合は専用の接着剤やタッカーを使用して固定することができます。ただし雨漏りしているケースでは、漏水個所を特定できなかったり、下地の補修が必要になることがあります。
また高所での作業に慣れていない人が屋根に登るのは思わぬトラブルの原因となります。なるべくなら自分で修理するよりも、屋根修理のプロであるリフォーム会社に相談することをおすすめします。
アスベストが含まれているかの見分け方・危険性は?
アスベストは吸い込むと肺に繊維化を引き起こしたり、肺がんの原因となることから、自宅の屋根に使われていたらどうしようと心配になる方も多いのではないでしょうか。
アスベストは日本では2004年に規制が始まり、2006年9月には全面的に使用が禁止されました。よって2006年9月以降に施工された屋根にはアスベストが含まれていないことになります。
ただ2004年の規制が始まった時点で、実質的な製造はストップしていますので、2006年以前に製造された屋根にもアスベストが含まれていないケースが多くあります。
もし2004年以前に建築された自宅の屋根にアスベストが含まれているか知りたいという方は、一般財団法人建材試験センターの「石綿含有建材データベース」にメーカーや品番を入力して検索すると調べられます。
ただたとえ住んでいる家の屋根にアスベストが含まれていても、危険性はそれほど高くありません。というのも屋根材で使用しているアスベストはセメントと混ぜて固められいるからです。
屋根材がボロボロに崩れていたり、地面に落ちて粉々に砕けない限り、アスベストが空気中に飛散することはほとんどなく、吸い込んでしまう確率も限りなく低いのでご安心ください。
太陽光パネルを設置する方法・費用について
自宅で使うための電気を発電したり、電力業者に売電する目的で太陽光パネルの設置を検討されている方もいると思います。もちろんアスファルトシングル屋根にも設置が可能です。
アスファルトシングル屋根にパネルを取り付ける際には、専用の架台(金具)を使用します。現在は太陽光パネルメーカー各社が、アスファルトシングル屋根用に専用の金具を製造していますので、それらを取り付けて設置してください。
ただ金具を設置する際は屋根に直接穴を開けることになりますので、キチンと処置をしないと雨漏りが発生する可能性がでてきます。また太陽光パネルを乗せるとその分だけ屋根に重量がかかりますので、設置方法や耐震性を考えてくれるような、太陽光パネルの設置に慣れた業者に依頼しましょう。
雪の多い地方でも設置できる?
アスファルトシングル屋根は、最大でも積雪30㎝ほどの地方なら問題ありません。ただし1mも2mも雪が積もるような豪雪地帯の屋根には向かないでしょう。
というのもアスファルトシングル屋根の表面にはざらざらした石が貼ってあるため、屋根に積もった雪が滑り落ちないからです。住宅の強度的には屋根に雪がない方が安心ですし、雪下ろしをする際に屋根材の表面をキズ付ける心配があります。
また屋根に雪を乗せたままにしておくと「すが漏り」という現象が発生する恐れがあります。すが漏りとは雪による雨漏りのことで、屋根に積もった雪が解けて屋根材の少しの隙間から水が伝うことで起こります。
屋根材にしみこんだ水が今度は凍結すると膨張して剥がれの原因となり、さらに雨漏りを悪化させてしまうため、アスファルトシングル屋根は雪が降ってもすぐに溶ける地方や、それほど積もらない地方なら設置が可能です。
お住いの地域特性をふまえて上手に取り入れよう!
日本ではアスファルトシングルの屋根材としての普及はこれからですが、他の屋根材と比べても意匠性があり施工費が安く、耐震性や耐久性に優れているということで将来に大きな期待が持てます。
特に屋根リフォームではカバー工法に適しており、工期や費用をかけないで屋根全体を新しくすることができます。もちろん太陽光パネルの設置が可能で、塗装工事で美観を保つメンテナンスもできます。
ただし湿気の多い地域や台風の通り道になっているエリア、豪雪地帯の屋根材としてはあまり向きません。お住いの地域がアスファルトシングル屋根に適しているか確認して、上手に取り入れることをおすすめします。