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「粘土瓦ってどんな瓦のこと?」「粘土瓦をリフォームするにはどんな方法がある?」という方に、こちらの記事では粘土瓦の種類から劣化症状別のリフォーム方法まで詳しく解説していきます。
適切なリフォーム方法が知れれば粘土瓦屋根の寿命を伸ばせるでしょう。また粘土瓦とそのほかの屋根材との比較では、それぞれのメリット・デメリットが分かり、屋根の種類を選ぶ際の参考になること間違いありません!
粘土瓦は日本で古くから使われている伝統的な屋根材です。私たちの先祖がお寺やお城の屋根に粘土瓦を使ってきたのには理由があるはずです。粘土瓦の特徴を良く知ってあなたの屋根選びやリフォーム方法を選択する際の参考にしましょう。
粘土瓦とは
日本の住宅屋根の約半分は粘土瓦の屋根となっています。そんな粘土瓦の歴史や製造方法、構造などを詳しく見ていきましょう。
寿命が長く歴史のある屋根材
粘土瓦は日本が誇る高寿命の屋根材として、古いお寺や歴史的建造物である城の屋根に使われています。粘土瓦が最初に歴史に登場したのは、今から約1400年前の飛鳥時代という古さです。
粘土瓦とは粘土を瓦の形に成形し、乾燥させたのちに一千度以上の高温で焼き上げた建築材料で、釉薬を塗ったり瓦をいぶすことで表面に塗膜を作り風雨にさらされても耐久性の高い屋根材に仕上げています。
粘土瓦の寿命は50年以上と他の屋根材に比べてもダントツに長く、耐水性や防音性、耐熱性に優れている高機能の屋根材です。
粘土瓦を単に「瓦」と示すことも多い
建築業界やリフォーム業界では、「瓦」と言うと粘土瓦を指すことが多くあります。そもそも瓦という言葉の意味は「粘土を形作り窯で焼いたもの」となっており、粘土瓦=瓦と表現するのは言葉の使い方としても正しいといえます。
ただし建築業界では粘土瓦以外に「~瓦」と呼ぶものが多くあります。
- セメント瓦
- コンクリート瓦
- スレート瓦
- モニエル瓦
- 金属瓦
これらはそれぞれ使用している素材が異なりますので、粘土瓦と混同しないように気を付けましょう。
粘土瓦の構造について
粘土瓦を施工する際の構造には二種類あります。それぞれの特徴をご紹介していきます。
土葺き工法
土葺き工法とは下地の野地板の上に土葺き材を敷き、その上に粘土を乗せて瓦を置いていく施工方法です。
瓦自体はどこにも固定されておらず粘土の接着力だけで屋根にとどまっている状態です。屋根が大変重くなり地震発生時には瓦の脱落が多いことから、徐々に施工される家が減り、今では職人の数すら少なくなっています。
引き掛け桟瓦葺き工法
土葺き工法に代わる施工方法が引き掛け桟瓦葺き工法です。野地板の上に防水シートを敷き、等間隔に桟木(瓦桟)を設置します。瓦は桟木に引っ掛けるようにして釘を使って固定します。
現在粘土瓦を屋根に葺く際には、こちらの引き掛け桟瓦葺き工法を用いられることがほとんどです。
粘土瓦は補修がいらない?
粘土瓦は耐用年数が長いことから「メンテナンスフリー」の屋根材として紹介されることもありますが、適切な補修やメンテナンスは欠かせません。
屋根は絶えず風雨にさらされることから、高耐久な粘土瓦であっても劣化することがありますし、棟瓦の固定に用いられる漆喰などは瓦よりも早く劣化するためです。
屋根の上での歩き方
粘土瓦を葺いた屋根の上を歩く際には、足を置く場所や歩き方に十分な注意が必要です。知識がないまま瓦屋根の上を歩くと力のかけ具合では瓦が踏み割れをおこしてしまいます。
粘土瓦の上を歩く際は、瓦が低くなっている部分(谷部分)につま先から足を下ろします。この時なるべく踵には力を入れないようにしましょう。逆に高くなっている部分は瓦同士が重なっており、ここを踏むと瓦がガタついてしまいます。
なるべくなら靴よりも地下足袋などの底が柔らかい履物を履き、雨が降った後などは滑りやすいですので絶対に屋根に登らないようにしましょう。
粘土瓦の種類を製造方法・形状・産地で解説
粘土瓦について知るにはどんな種類があるかや特徴などを知る必要があります。ここでは製造方法・形状・産地による粘土瓦の種類を解説していきます。
製造方法の違い
粘土瓦の製造方法の違いは、粘土を瓦の形に成形した後で釉薬を塗るか塗らないかで分けられます。それぞれに仕上がりの見た目や機能に特徴が出てきます。
釉薬瓦(陶器瓦)
釉薬(うわぐすり)を表面に塗って焼き上げた粘土瓦を「釉薬瓦」や「陶器瓦」といいます。釉薬とはガラス質の粉末のことで、表面にツヤツヤとした光沢を出し、水の染み込みを防ぐ役割があります。
毎日の食事で使用する陶器もこの釉薬が使われています。釉薬の色でさまざまなカラーバリエーションを表現でき、汚れを弾いたり強度を出すのにも有効です。
釉薬によって色付けされた粘土瓦は色褪せすることがほとんどなく、水を弾いてくれることから、屋根に施工した際には塗装の必要がありません。
無釉薬瓦(いぶし瓦・素焼瓦)
釉薬を使用せずに焼き上げた瓦(無釉薬瓦)には、いぶし瓦・素焼瓦・窯変瓦・煉込瓦といった種類がありますが、住宅の屋根に多く使用されているのはいぶし瓦と素焼瓦です。
いぶし瓦とは瓦を焼成した後に窯内を蒸し焼き状態にして作った瓦のことです。表面に炭素膜ができ、耐水性がアップします。
素焼瓦は釉薬もつけず、燻化工程も経ずに焼き上げた瓦のことで、粘土そのままの赤茶色をしています。耐用年数は釉薬瓦より短いですが、それでも30~50年ほどの寿命があります。
形状や葺き方の違い
粘土瓦はその形や屋根に葺く際の違いでさまざまな種類に分類できます。主な形状や施工方法をご紹介していきます。
和瓦
和瓦は日本瓦ともいい、日本に古くからある瓦の形をしています。最近では和モダン住宅や店舗にも使用され、古来から現代にいたるまで建物建築に欠かせない建材となっています。
お寺や神社、お城や民家など日本建築の屋根にはもれなく和瓦が葺かれています。場所によっていぶし瓦が多いといった違いはありますが、いずれも規格は同じで施工方法も一緒です。
洋瓦
洋瓦は住宅の洋風化に伴って開発された屋根瓦です。まるで海外の住宅の屋根で使われているようなおしゃれな瓦を目指して、日本の瓦メーカーの多くが製造しています。
洋瓦の歴史は江戸末期に国内でフランス人が製造したことから始まりました。形はS形・F形・M形の三種類あり、製造方法は和瓦とほぼ同じです。
洋瓦と似ているものにセメント瓦やコンクリート瓦があります。粘土の代わりにそれぞれセメントやコンクリートを使用しており粘土瓦とは別物です。一時は粘土瓦よりも価格が安いということで人気になりましたが、粘土瓦と同じくらい重量があり塗装メンテナンスが必要ということで徐々に需要は減少しています。
本葺き瓦
本葺き瓦とは中国から瓦が伝わった飛鳥時代から使われている瓦で、「本平」という平らな形の瓦と「素丸瓦」という丸い形の瓦を組み合わせて葺く瓦です。
本平を二列葺いたところに素丸瓦を被せるように葺いていきます。本平の重なり部分は三枚となっており、上の一枚が割れても下の瓦が水を受けてくれるので防水性が高い葺き方です。
主にお城やお寺の屋根に使用され重厚感や荘厳さを表現できます。一般住宅ではあまり使われない瓦ですが、和瓦の本場である淡路島では今も住宅の屋根に使われています。
飾り瓦
屋根の一番高い棟部分や軒先といった目につきやすい部分に建物の荘厳さや勢いを表転する目的で設置される瓦です。飾り瓦で有名なのが鬼の顔の形を模した「鬼瓦」です。
建物や住む人を守る魔除け災難除け、装飾の意味で付けられることがほとんどで、鬼瓦の他には次のような飾り瓦があります。
- 鯱(しゃち)
- 鴟尾(しび)
- 露盤(ろばん)
- 唐獅子
- 帆立(ほたて)
鬼瓦では専門の「鬼師」といわれる職人がおり、注文に応じて一から手作りしています。
産地の違い
和瓦の産地によっても特徴や種類が異なります。こちらでは日本三大瓦といわれる三州瓦・石州瓦・淡路瓦についてご紹介していきます。
三州瓦
愛知県の西三河地方では旧国名の三河を意味する「三州瓦」の製造が盛んです。良質な粘土が豊富に採れることや交通の便が良く輸送コストを抑えられること、原料を採掘する業者および設備業者が揃っていることなどが普及した理由です。
平成25年度の集計によると、全国で使用されているおよそ8割がこの三州瓦で、日本瓦だけでなくS形瓦やF形瓦といった洋瓦も広く生産されています。三河地方のある中部地方は、瀬戸焼や美濃焼などの陶器製造も盛んです。こうした焼き物文化のノウハウが瓦製造にも生かされていると考えます。
石州瓦
島根県の石見地方を中心に製造されているのが石州瓦です。他の二種類よりも薄くて重量が軽いのが特徴です。出雲地方で採掘された石を釉薬としていることで、独特の赤色に焼きあがります。
石州瓦は通常よりも高い1200度以上で焼成することで、水分を吸収しにくく塩害や凍結にも強いのが特徴です。三州瓦の次に国内で普及し、積雪の多い山陰地方でも屋根に葺かれています。
淡路瓦
兵庫県の淡路島で製造されているのが淡路瓦です。粒子の細かい「なめ土」という粘土を使用し、通気性や耐久性、耐火性に優れた瓦に仕上がります。
釉薬を付けずに燻して作るいぶし瓦として、「いぶし銀」とも呼ばれ表面は光沢のある美しい灰色をしています。いぶし瓦の製造は全国一で、日本へ瓦製造技術が伝わったほぼ同時期に淡路島でも製造されるほど、その歴史は古いといいます。
瓦屋根の形を詳しくご紹介!
上でご紹介した瓦の種類の他に、瓦の形状による分け方があります。ここではJIS規格による分類に沿った分類方法を解説していきます。
J形瓦(和瓦)
緩やかな波形が特徴のJ形瓦は、かつては「和瓦」や「日本瓦」と呼ばれていました。1996年のJISの改定以降、Japanの頭文字を取ってJ形瓦と名付けられました。
形状は昔から伝統的に伝わるデザインで、断面が美しい波型で雨が降っても水切れがいいのが特徴です。細かい寸法による区分がされ、それぞれの長さや谷の深さなどが決まっています。
S形瓦(洋瓦)
西洋の瓦(スパニッシュ瓦)を参考に作られたのがS形瓦です。S形瓦のSは「Spanish」のことで、断面は緩くS字のカーブが付いています。元々は瓦の谷と山は別の瓦で組み合されていましたが、それらを一枚にしたのがS形瓦です。
温かみのある赤茶色やオレンジ色をしているのが多く、カラフルな色展開も特徴です。洋風の住宅によく合い、数種類の色を混ぜて葺く「混ぜ葺き」ができるのも魅力の一つです。
F形瓦
F型瓦はJ型瓦やS型瓦にあるような山や谷がなく、平たい板状の形をした瓦です。名前の由来は平らを意味する「Flat」や参考にしたフランス瓦の「France」から取ったという説があります。
最近では屋根に太陽光を乗せるために、屋根にデコボコの少ないF形瓦を選ぶ方が増えてきました。全体的にシンプルかつ洗練された印象で、洋風建築だけでなく和風建築にも合わせられます。
瓦の表面積が少ないということで軽量で、一坪当たりに必要な瓦の枚数が少なくて済むのもF形瓦の大きなメリットです。
M形瓦
M形瓦は分類的にはF形瓦の一種とみなされていますが、形状はS形瓦に近く、山が二つ並んでいるような形をしていることから「ふた山瓦」と呼ばれることもあります。
M形瓦は西洋瓦の一種として、洋風建築の住宅によく使用されています。その形状により踏み割れ強度が高く、その分瓦の厚みを抑えられることから地震に強い軽量瓦や防災瓦としても人気です。
粘土瓦と他の屋根材を比較
粘土瓦と他の屋根材を比較した時、異なる特徴がいくつかあります。こちらの表は粘土瓦以外の主要屋根材5種類を、価格や耐用年数、耐久性などで比較した一覧です。
屋根材 | 価格 (㎡) | 耐用年数 | メンテナンス | 耐火性 | 耐震性・耐久性 | デザイン性 |
粘土瓦 | 15,000円~ | 50年~ | 不要 ※下地補修必須 | ◎ | × | ◎ |
スレート | 6,000円~ | 20~30年 | 10年~ | ○ | ○ | ○ |
ガルバリウム鋼板 | 7,000円~ | 20~30年 | 15年~ | △ | ◎ | ○ |
トタン屋根 | 5,000円~ | 10~20年 | 10年~ | △ | △ | ○ |
アスファルトシングル | 5,000円~ | 10~30年 | 10年ごと | × | ◎ | ◎ |
銅板 | 18,000円~ | 60年以上 | 不要 ※下地補修必須 | ◎ | ◎ | △ |
粘土瓦は銅板に次いで価格が高めですが、耐久性が高く耐火性やデザイン性もあるのが魅力です。粘土瓦と比較した時の特徴をそれぞれの屋根材ごとに見てきましょう。
スレートの特徴
スレートは厚みが約5mmほどの平板な屋根材で、材料はセメントとパルプ繊維です。商品名の「コロニアル」や「カラーベスト」と呼ばれることもある建売住宅などでよく用いられている屋根材となっています。
粘土瓦よりも価格が安く軽量で家にかかる負担が少なくて済むのですが、耐久性は粘土瓦に劣り経年劣化で割れたりヒビが入りやすいのがデメリットです。また粘土瓦と異なり塗装メンテナンスが欠かせないのも特徴です。
塗装する際は塗装前の下地処理や塗装後の縁切り作業が必須で、塗装を怠ると雨水が染み込んで雨漏りの原因となります。
ガルバリウム鋼板の特徴
耐久性の高い金属屋根と言えば最近人気なのがガルバリウム鋼板です。亜鉛やアルミニウムをメッキ加工した屋根材で、粘土瓦の1/10ほどの軽さしかないので建物の耐震性を高めるにはおすすめです。
金属でありながらサビにくく耐用年数もそれほど短くないことからコスパの良い屋根材の一つとなっています。とはいえ屋根に葺いた時の見た目はシンプルで、粘土瓦のような個性を出すことにあまり向いていません。
トタン屋根の特徴
トタンは軽量で材料費・施工費が粘土瓦に比べてはるかに安いことから、かつては多くの住宅の屋根材として使用されていました。しかしサビやすく強風で剥がれたり破損する可能性が高いということから徐々に使われなくなりました。
また耐用年数は粘土瓦が50年以上に対して10~20年と短いのが特徴です。トタンはこまめな塗装メンテナンスが欠かせないことから、初期費用が安くてもメンテナンスコストが高いというで、こちらも人気が無くなった理由の一つです。
アスファルトシングルの特徴
アスファルトシングルはガラス繊維にアスファルトを染み込ませたシート状の屋根材です。北米やカナダでは主流の屋根材ですが、日本ではあまり普及していません。
アスファルトシングルは粘土瓦と異なり、軟らかい素材でどんな形の屋根にも施工でき、軽量で防水性が高いというメリットがあります。
一方で耐風性が弱く水はけの関係から施工できる屋根勾配が制限されています。また粘土瓦ほど取り扱える業者がおらず施工費が高めなのも、アスファルトシングルが普及しなかった訳と言えるでしょう。
粘土瓦の特徴をメリットデメリットから
様々な屋根材の特徴が分かったところで、粘土瓦の特徴をメリット・デメリットから見ていきましょう。どんな屋根材があるのか知りたい方はこちらもぜひ参考にして下さい。
粘土瓦のメリット
まずは粘土瓦のメリットからです。粘土瓦にはこのようなメリットがあります。
- 高寿命で耐久性が高い
- 防音性に優れている
- 色あせ・色落ちしにくい
- 防水性が高く雨漏りしにくい
これらについて詳しく解説していきます。
高寿命で耐久性が高い
粘土瓦の耐用年数は製造方法によって若干異なりますが、陶器瓦では50年以上と高寿命なのが特徴です。また粘土瓦には塗装メンテナンスの必要がなく、メンテナンスコストが抑えられるのも魅力となっています。
陶器瓦表面はツルツルしていることから汚れが付きにくく、外観の変化がしにくい特徴があります。また1000度以上の高温で粘土を焼き上げている製法により、瓦自体が非常に強固で他からの力が加わらない限りは割れたり破損しにくくなっています。
防音性に優れている
瓦自体の厚みと野地板との間に空気の層ができることから、防音性に優れているというメリットがあります。特に屋根と天井との間に「小屋裏」がない住宅でも、粘土瓦を葺いているだけで雨音が気になることはほとんどありません。
色あせ・色落ちしにくい
粘土瓦でも釉薬を塗って焼成した陶器瓦では、色落ちや色あせすることがほとんどありません。スレートやガルバリウム鋼板などは表面の塗料が劣化することから10年単位で屋根塗装が必要になりますが、陶器瓦ではその必要がないのです。
いぶし瓦は経年により黒く変色したり色むらが発生することがあります。ただこの色むらは劣化ということでなく瓦の性能に何ら問題はありません。瓦専用の塗料がありますが、もともとの防水性や味わいが損なわれてしまいますので、粘土瓦の塗装はあまりおすすめできません。
サビが発生しにくい
粘土瓦は金属製でないため、トタン屋根にできる内部にまで侵食するようなサビは発生しません。ただしいぶし瓦ではまれに、粘土に含まれている鉄分と雨水が反応して、サビができることがあります。
いぶし瓦にできるサビは内部にまで進むようなものではなく、あくまで表面の層に限定して発生するもので瓦の品質には悪影響を及ぼしません。気になるようなら高圧洗浄でメンテナンスが可能です。
防水性が高く雨漏りしにくい
粘土瓦は防水性が高く雨漏りしにくいというメリットがあるので、雨が多い日本ではおすすめの屋根材です。陶器瓦はガラス質により、いぶし瓦は炭素塗膜により表面を覆われているため、水を通すことがありません。
また瓦を屋根に葺く際もつなぎ目は重ねて施工する場合がほとんどなので、下地にまで水が入り込むこともありません。
粘土瓦のデメリット
粘土瓦にはメリットだけでなくデメリットもあります。こちらは粘土瓦の主なデメリットです。
- 重量があるため耐震性は低い
- 価格が安い屋根材ではない
- 台風・強風で飛散することも
- 劣化するとカビ・コケが発生
重量があるため耐震性は低い
粘土瓦の一番のデメリットは一枚当たりの瓦の重量が重く、屋根に葺くと建物の耐震性が低下することです。陶器瓦の重量は1枚当たり2.7~3.6㎏、これに下地などを加えると一坪当たりの重量は230~300㎏ほどになります。
軽量な化粧スレートが一坪約60㎏、ガルバリウム鋼板が約43㎏なのと比べると約4倍~5倍の重量があることが分かります。建物は重心が上に行くにつれて耐震性が下がります。
現在の建築基準で建てられた住宅であれば、粘土瓦を乗せても十分な耐震性を確保する工事がされていますが、数十年前の住宅は強い地震で倒壊する危険が考えられます。まずは住宅の耐震性を調査してもらい、問題がある場合は軽い屋根材へ葺き替えるなどの対策を取りましょう。
価格が安い屋根材ではない
粘土瓦のデメリットには屋根に葺く際の費用が高めということがあります。これは屋根材自体が高額なことに加えて、施工に手間や時間がかかるため工事費が高くなるのが理由です。
スレート屋根と比べると施工費は1.5倍~2倍ほど初期費用は他の屋根材に比べて高めですが、最初にまとまったお金をかけるとその後のメンテナンスにほとんど費用がかからないというメリットもあります。
屋根材を選ぶ際には初期費用の安さ・高さだけでなく、何年後にどの位メンテナンス費用がかかるのかといったことも考え、トータルでお得な屋根材を選ぶようにしましょう。
台風・強風で飛散することも
昔ながらの土葺き工法で葺いた瓦屋根や一部が破損したままの瓦屋根では、台風や突風といった強風で瓦が飛散したり脱落する危険があります。住宅を直撃すると窓ガラスが割れたり、人にあたると大けがをすることもありますので注意が必要です。
もし台風が来ても安心な粘土瓦をお探しなら「防災瓦」を選ぶと良いでしょう。防災瓦は従来の施工方法と異なり、瓦同士がかみ合わせ構造を持っているため、強風でも飛散しにくくなっています。
劣化するとカビ・コケが発生
粘土瓦の表面に土やホコリが付着したままになっていると、まれにカビやコケが発生することがあります。屋根材としての機能や品質に問題はありませんが、見た目が悪くなったり美観を損ねてしまいます。
ももしカビやコケが気になるようなら、高圧洗浄をかけたり柔らかいブラシで洗い流すことをおすすめします。家庭用の中性洗剤を含ませたスポンジやブラシでこするだけで落とせ、高圧洗浄で洗い流せば元の通りきれいになるでしょう。
粘土瓦のメーカー・商品・色展開
日本で古くから製造されていた粘土瓦は、地域やメーカーごとに様々な特徴や色があります。こちらでは主要メーカーの商品をご紹介するとともに、色展開についても一覧でご説明します。
【栄四郎瓦(旧丸栄陶業)】プラウドプレイン
三州瓦の本場、愛知県碧南市で創業した栄四郎瓦(旧丸栄陶業)では、陶器瓦はもちろん、いぶし瓦や地面に敷く「敷瓦」などを製造しています。その中でも主力商品として人気なのが「プラウドプレインシリーズ」です。
シンプルでフラットな形のF形瓦で、ジョイントフックを使用して瓦同士をがっちり固定できます。これにより耐風性や耐震性の向上が期待でき、防災面でも安心です。
プラウドプレインシリーズのもう一つの特徴は太陽光パネルが設置できることです。据え置き型・一体型といったパネルの種類を問わずに屋根に設置でき、配線を通すための穴が開いた同質瓦で見た目に違和感もありません。
【マルスギ】和形防災瓦
マルスギの和形防災瓦は和瓦の持つ伝統的な美しさと、地震や強風にも耐える高い防災性を兼ね備えた防災瓦です。側面にある切り込み部分のツメを瓦同士で抑え込むことでがっちりとかみ合い、揺れや風による瓦のズレや浮き上がりを防止します。
また水切機能により横からの風と共に吹き込んだ水の侵入を防止します。他にも瓦の縁に突起を設けて瓦の葺きあがりを安定するなど、防災性や施工性に優れた粘土瓦となっています。
【新東】高反射瓦
新東の高反射瓦の特徴は赤外線の反射率が高いことです。実は太陽光発電パネルを屋根に設置した時に発電効率を良くするという効果が期待できるのです。
太陽光発電システムでは、屋根表面の温度が高温になると発電効率が悪くなってしまいます。高反射瓦で葺いた屋根なら赤外線を反射することで屋根の温度上昇を抑制できます。
一般的な化粧スレートと比較すると赤外線の反射率は約8倍、温度にすると20度も低下することになります。さらに室内の温度上昇も避けられるということから、高反射瓦に太陽光パネルを設置した場合は一石二鳥の効果が得られるでしょう。
【朝日窯業】S形防災瓦
朝日窯業のS形防災瓦は、瓦の端同士を接続することで台風や突風にもびくともしない屋根にすることができます。また建物の構造が耐震基準を満たしていれば、耐震性を確保することもできます。
さらに陶器瓦ならではの表面のガラス質が雨水を弾き、速やかな排水を促します。カラーバリエーションは全18色と豊富で、外壁の色や洋風・和風といった住宅に合わせて選べるのも人気となっています。
【富士スレート】エアルーフシリーズ
富士スレートのエアルーフシリーズは、F形瓦を主力としてS形やM形といった様々な仕様の瓦を展開しています。和風住宅・洋風住宅の区別なく使え、カラーバリエーションも13色と豊富です。
特筆すべきは高い防水性・耐風性・耐震性です。粘土瓦にありがちな寸法の狂いを極力抑え、屋根に葺いた時の密着性で雨水を侵入させません。
また富士スレート独自で耐風試験を実施し、特殊な金具を使うことなく「対角2点止め工法」のみで瓦を結束しています。
商品ごとの色・カラーバリエーション
上でご紹介した5種類の商品ごとの色展開やカラーバリエーションをご紹介します。家の雰囲気やテイストに合わせて選ぶと良いでしょう。
【メーカー】商品名 | カラーバリエーション |
【栄四郎瓦】プラウドプレイン | 銀黒・マットブラックなど 計7色 |
【マルスギ】和形防災瓦 | 銀富士・昴など 計5色 |
【新東】高反射瓦 | マーブルブラックなど 計3色 |
【朝日窯業】S形防災瓦 | ハイシルバーなど 計18色 |
【富士スレート】エアルーフシリーズ | いぶしやブロンズなど 計13色 |
粘土瓦のリフォーム施工方法と工期
粘土瓦の屋根をリフォームする際の施工方法や実際の工期、リフォームに適したタイミングなどをご紹介します。粘土瓦ならではの工事法がありますので、リフォームをご検討の方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
リフォーム方法は3種類
粘土瓦屋根のリフォーム方法は部分補修・葺き替え・葺き直しの3種類があります。それぞれの施工方法や注意点などを解説していきます。
部分補修
風で瓦の一部が割れたり脱落した時はその部分だけ補修することが可能です。また漆喰の剥がれや棟瓦の崩れなどの場合も部分補修で対応できます。部分的な修理であれば時間や費用はそれほど掛からずに済むというメリットがあります。
特に棟瓦やそれを固定している漆喰は、屋根の一番高い場所にあり風や雨の影響を受けやすいため劣化が起こりやすくなっています。
劣化の範囲が限定的であればその部分だけの修理で済みますが、補修箇所が多かったり劣化がひどいと部分補修では対応できず、葺き替えや葺き直しを検討した方が良い場合があります。
葺き替え
瓦やその下の桟瓦、防水シートなどを全て撤去して、野地板を補強・交換したのち新しい屋根材を葺く葺き替えでは、他の屋根材への変更が可能です。瓦屋根からの葺き替えで多いのが、軽量で耐久性が高いガルバリウム鋼板へのリフォームです。
工事範囲は大規模で費用も日数もかかりますが、下地から新しくできるのでひどい雨漏りや下地の劣化も改善できます。特に瓦自体が劣化して、下地にまで腐食が進んでいる場合は、思い切って葺き替えリフォームをした方が屋根の寿命を伸ばせます。
葺き直し
耐用年数が長く耐久性のある粘土瓦の屋根では、今使用している瓦を再利用する葺き直しリフォームが可能です。葺き直しとは既存の瓦を一度屋根から降ろし、下地を補修および交換した後に防水シートを敷き、桟木を設置したのちに瓦をもう一度屋根に戻して葺くリフォーム法です。
瓦を処分する費用がかからず屋根の機能を一新できるので、エコなリフォームと言えるでしょう。ただし瓦同士をコーキングで固定する「ラバーロック工法」で施工された瓦は再利用できません。
葺き直しは粘土瓦の中でも和瓦だけができるリフォーム方法です。まだ瓦が使えそうだとなったら、瓦の取扱に詳しい業者に依頼して葺き直しを検討してみてはいかがでしょうか。
カバー工法(重ね葺き)は不可
重量がある粘土瓦の屋根には、カバー工法でリフォームすることができません。カバー工法は重ね葺きともいい、既存の屋根の上に新しい屋根を葺くリフォーム方法です。
既存の屋根を撤去処分する費用や工期がかからないため人気のある方法ですが、屋根の重さが従来よりも重くなるため、粘土瓦を葺いている屋根では建物の梁や柱に負荷がかかり、耐震性が低くなる可能性があります。
屋根塗装は必要ない
粘土瓦の屋根では基本的に、屋根塗装の必要がありません。元々釉薬やいぶした煙で表面を保護しているため、わざわざ塗料を塗らなくても表面がしにくいという理由からです。
いぶし瓦は経年により黒ずんだり色あせることがありますが、防水性や品質には何ら問題はありません。あえて味として変化を楽しめるということで、屋根に風格や風情を出せると人気があります。
施工方法ごとの工期
こちらでは粘土瓦の屋根を葺き替え・葺き直しでリフォームした場合の手順や工期をご紹介していきます。日本瓦のリフォームは工期がかかりやすく、場合によっては1か月ほどの日数を要することがあります。
工期を知りたい場合は事前に現地調査をしてもらって業者に見積もりを取る際に確認しましょう。こちらは葺き替えの手順と工期です。
- 瓦・桟木・防水シートの撤去
- 野地板の張り替えおよび補修
- 防水シート(ルーフィング)張り
- 桟木設置
- 新しい瓦を設置
- 棟瓦・雨どいなどの取り付け
続いて葺き直しによるリフォームの手順と工期です。
- 既存の瓦を屋根から降ろす
- 桟木・防水シート・野地板の補修および交換
- 保管していた瓦を葺き直す
- 漆喰・棟瓦・棟板金の施工
葺き直しでは既存の瓦を再利用するため、屋根から丁寧に下ろし破損させないように保管する必要があり、これに2~3日程度を要するため日数がかかります。土葺き工法で施工している屋根は土を撤去する時間がかかるためさらに工期が伸びます。
リフォームのタイミング
こちらは粘土瓦屋根のリフォームのタイミングとその内容です。
タイミング | リフォーム内容 |
10年ごと | 漆喰詰め直し 点検 |
20~30年 | 葺き直し 漆喰補修 点検 |
40~50年 | 葺き替え 葺き直し |
上記のタイミング以外でも、台風が直撃したり大きな地震があった後は瓦屋根に何らかのトラブルが発生している恐れがあります。業者に屋根に登って点検してもらい、瓦のズレや落下は軽微なうちに補修しましょう。
耐用年数・劣化症状ごとのメンテナンス法
粘土瓦の耐用年数や主な劣化症状、適したリフォーム方法などを見てきましょう。「粘土瓦はメンテナンスフリーな屋根材か?」という疑問にもお答えしてきます。
粘土瓦の寿命は50年~
粘土瓦の寿命は50年前後と言われていますが、100年以上経っても劣化なく屋根材として使われている瓦もあります。ただ一口に粘土瓦と言っても、製造方法などで耐用年数は変わってきます。
こちらは陶器瓦・いぶし瓦・素焼瓦の主な耐用年数です。
粘土瓦の種類 | 耐用年数 |
釉薬瓦(陶器瓦) | 50~60年 |
いぶし瓦 | 40~50年 |
素焼瓦 | 30年~50年 |
釉薬を塗布して焼成した陶器瓦が一番耐用年数が長く、次にいぶし瓦と素焼瓦が続きます。
劣化症状ごとの修理方法
粘土瓦の屋根に発生する主な劣化症状と適した修理方法はこちらです。
劣化症状 | 修理方法 |
・瓦のズレ ・瓦の割れ ・漆喰の崩れ ・棟瓦の割れ・剥がれ | 部分補修 |
・防水シートの穴あき ・雨漏り ・屋根の穴あき ・一部の崩落 ・全体に及ぶ屋根の劣化 | 葺き替え |
・防水シートや下地のみの劣化 ・下地のたわみ・ゆがみ | 葺き直し |
ごくまれに瓦の凹凸が大きなS形瓦には、瓦と下地の隙間に鳥が巣を作ってしまうことがあります。鳥の鳴き声や糞尿による臭いの被害は「鳥害」として、巣作りが始まる3月からひなが巣立つ7月まで続きます。
去年も鳥が巣を作った、家の近くを燕やスズメが飛んでいるという場合は瓦に巣を作らないような対策が必要です。
メンテナンスフリーの屋根材はない
どんなに高寿命の粘土瓦であっても、全くメンテナンスが必要ないという訳ではありません。屋根としての機能を果たすには、こまめな点検や劣化症状に応じたメンテナンスが欠かせません。
というのも屋根を構成するのは瓦といった屋根材だけでなく、雨どいや漆喰、下地なども含まれています。それらの耐用年数は瓦程長くないため、それぞれの寿命によって交換や補修が必要となります。
施工事例ごとのリフォーム価格
粘土瓦の屋根リフォームの価格について、施工方法や建物面積ごとにご紹介していきます。今後リフォームをお考えの方は予算の参考にしましょう。
部分補修
部分補修では補修箇所や範囲によってリフォーム価格が異なります。主な補修内容や単価はこちらです。
補修内容 | リフォーム価格 |
ひび割れ補修 | 5,000円~/枚 |
瓦の差し替え | 9,000円~/枚 |
軒先・下地の部分補修 | 50,000円~ |
漆喰補修 | 2,500円~/㎡ |
棟の積み直し | 10,000円~/m |
葺き替え
葺き替えリフォームでは屋根の形や勾配、新たに使用する屋根材の種類によって価格が変動します。陶器瓦の葺き替え工事にかかる費用は1㎡当たり12,000円からとなります。
建物面積 | リフォーム価格 |
40㎡(屋根面積65㎡) | 78万円~ |
50㎡(屋根面積78㎡) | 93.6万円~ |
60㎡(屋根面積100㎡) | 120万円~ |
70㎡(屋根面積120㎡) | 144万円~ |
葺き直し
既存の粘土瓦を使用した葺き直しの費用相場は㎡当たり10,000円~18,000円が相場です。建物面積ごとのリフォーム価格はこちらです。
建物面積 | リフォーム価格 |
40㎡(屋根面積65㎡) | 65万円~ |
50㎡(屋根面積78㎡) | 78万円~ |
60㎡(屋根面積100㎡) | 100万円~ |
70㎡(屋根面積120㎡) | 120万円~ |
粘土瓦はメンテナンス次第で寿命をさらに伸ばせる!
寿命が長く塗装の必要がない粘土瓦は、初期費用がかかりますがメンテナンスコストが抑えられる優秀な屋根材です。とはいえ地震の揺れや強風に弱くコケやカビが生えることがありますので、対策を取るなどして屋根の機能維持に努めましょう。
粘土瓦は製造方法や形状、メーカーに応じて様々な種類があり、立地やお住いの地域によって劣化症状が異なる場合があります。瓦屋根をリフォームする場合は瓦の取扱に慣れた業者に依頼し、粘土瓦の寿命をさらに伸ばすようなメンテナンスを行いましょう。